第28章 異変
『そんなこと一度もない。むしろ、スリザリンになんか絶対入りたくない!この間、私の友達に『汚れた血』って酷いこと言うような奴らさ!』
ミラはまだ怒っていた。あの日を思い出すと、ドラコに対する怒りが沸々と湧いてくるのだ。トムからの返信は、少し遅れた。いつもは即答するくせに、内容が内容だけに、考えているのかとミラは思った。
しかし、時間はそんなにかからなかった。
『そのスリザリン生が君の友達に『汚れた血』と言ったのは、何か理由があるんじゃないかい?よっぽど腹立たしいことを言ったとか』
「…腹立たしいこと?」
ミラはあの日のことを思い出そうとした。
ーーあの日は、グリフィンドールのクィディッチの練習があった。そこへスリザリン生たちが来て、練習のことでウッドとフリントが揉めていた。駆けつけると、スリザリンのチーム全員が最新鋭の箒を持っていて、ドラコはスリザリンの新しいシーカーになった。
その箒はドラコの父親が買い与えたもので、グリフィンドールチームの古い箒を見て侮辱してきた。
そして----『少なくとも、グリフィンドールの選手は、誰一人としてお金で選ばれたりしてないわ。こっちは、純粋に才能で選手になったのよ』----と、ハーマイオニーが言って、ドラコが怒った。
その時、私は笑ってしまった。ハーマイオニーの返しがいいと思って、ドラコのことをちっとも考えていなかった。
ミラは今になって自分たちがやってしまったことに気が付いた。
『トムの言う通りかもしれない』
『ほら、やっぱりね。スリザリンだからって、そうやって一方的に相手が悪いと決めつけるのは良くないよ』
ミラは言い返す言葉もなかった。確かに、ハーマイオニーのあの言い方では、ドラコはお金の力でシーカーになったとも聞こえる。ドラコがどれほどクィディッチが好きで、どれだけ選手になりたかったか。一年生の時、一人こっそりと練習していた事も知っていたはずなのに----。
『そうだね…許してもらえるかわからないけど、謝ってくるよ。ありがとう、トム』
『素直に自分の非を認めるところは、君の美徳だと思う。その君の友達に酷いことを言ったスリザリン生は、君にとって何か特別な関係なのかな?』