第28章 異変
十月がやってくると、皇帝や城の中に湿った冷たい空気が広がりはじめた。この季節になると、風邪が流行り出し、校医のマダム・ポンフリーは大忙しだ。
マダム・ポンフリー特製の『元気回復薬』を飲んでいる生徒を、チラホラと談話室や廊下で見かけるようになった。それを飲むと、数時間は耳から煙を出し続けることになるので、すぐに飲んだことが分かった。
このところずっと具合が悪そうだったジニーも、パーシーに無理矢理飲まさていた。
「ミラも飲んだほうがいい」
「そんな大したことじゃないから…」
ミラも少し前から、頭痛を感じていた。しかし、それは長いこと続くこともなく、時々あるだけで、ジニーのように顔色が悪いほどでもない。
「寝たら治るよ」
「そう言って、先週ずっと遅くまで起きてたでしょ」
ハーマイオニーが少し目を釣り上げて言った。
「今日はしっかり寝るから」
ミラは困ったようにはみかんだ。
そう言った手前、ジニーから日記を受け取った。
「もう一週間たったのか…」
「来週にする?」
「…ううん、受け取っとく。トムと話したい事があるんだ」
「ミラも彼のこと、名前で呼ぶようになったのね」
「うん、だってトムってずっと敬語で硬っ苦しいから、普通に話してって言ったら、そしたら----君も僕のこと苗字で呼ぶのはおかしい----って反論されちゃって」
「よかった、ミラもトムと仲良くなれて」
今日もパーシーに元気回復薬を飲まされたのか、ジニーの髪の下から煙が少し見えていた。クスクス笑っているジニーの顔色は、いつもより元気そうで、ミラもホッとした。