第28章 異変
『初めて僕以外のマグルの孤児院育ちと出会えて、不謹慎ですが、僕は喜びを感じています。きっと僕たちにしかわからない気持ちがあるから』
ーー自分以外にも、マグルの孤児院育ちがいたなんて…!
ミラも驚きを隠せなかった。
『僕自身もホグワーツの先生が来るまで、僕が魔法使いだなんて知りませんでした。孤児院は僕にとってとても窮屈な場所で、ホグワーツは僕にとって家だと思っています----君もそうですか?』
『全く同意!あんな孤児院になんて、ちっとも帰りたくない。夏休みもここで過ごせたらって、いつも思ってる』
『こんな嬉しい日はないです。ようやく分かり合える人と出会えるなんて』
『私も』と、ミラは書きそうになった手を止めた。
ーー違う、私には…ハリーがいる……でも…。
ワクワクしてしまっている自分がいた。本当に分かり合える人と出会えて、色々話たいと気持ちが溢れてきた。ハリーには、家族がいた。最悪なマグルだということも知っている。どんな環境かも分かってはいるものの、どんな形であれミラには家族の一人もいない。
『リドルは、自分の家族を知っている?』
『調べてわかりました。僕の母は魔女で、父はマグルでした。君は?』
『私は…わからない。何にも残されてなかったから』
チラリと、ミラの脳裏にみぞの鏡で見えた両親の姿が思い浮かび上がった。ほんの好奇心だった。
『私、特徴的な目の色をしてて----紫色なの。何か心当たりある?』
『紫色?ううん、心当たりはないです。でも、素敵な色ですね。見れないのが残念です』
それから色々なことをリドルと共有した。
パチン、と暖炉の燃えていた木が弾ける音が聞こえて、ミラはハッと日記から顔を離した。時計を見れば、夜中の二時近くになっていた。まさかこんなに熱中していたとは思わず、ミラは寝ることをトムに伝えた。
『もう遅いから、おやすみ』
『ええ。また君と話せるのを楽しみにしています』
日記を閉じると、ミラは疲れたようなため息をはいた。
それでも、自分と似たような境遇の人物に会えたことに、高揚感が溢れていた。