第28章 異変
その日の夜、ミラは部屋からこっそり日記を持って談話室に降りてきた。中々一人の時間が取れず、結局夜中になってしまった。談話室ががらんとしていて、暖炉の火がまだ少しだけ残っていた。
ミラは一人用のテーブルに日記を広げると、インクを浸した羽ペンを日記に書き出した。
『こんばんは、リドル。私、ミラです。ジニーから日記を受け取った』
相変わらず、インクはスッと日記に染み込んでしまい、不思議だとミラは思った。トムの返信は早かった。
『こんばんは、ミラ。久しぶりです。ジニーから色々聞いて、心配していました』
前に書いた時は夏休みの終わり頃だったので、トムとはかなり久しぶりだった。
『車で暴れ柳に突っ込んだこと?最高の思い出だよ』
『何があったのか聞いてもいいですか?』
ミラは一度、答えてもいいのか悩んだ----が、最近ドラコにバカにされたせいもあり、トムならどう答えてくれるのだろうか気になり、羽ペンを日記に走らせた。当時のことを簡単にだが、ミラはドキドキしながらトムの返事を待った。
『それは災難でしたね。でも、僕も車に乗って登校することは感心しません。君たちの誰かに、フクロウは持っていなかったのですか?』
トムの返答に、ミラはムッとした。
『私と、もう一人フクロウを持っていたけど、事情があって、きっと学校に手紙は届かなかったと思う。でも、空の上を飛んだ時、本当に楽しかった。あれほど自由を感じた瞬間はなかったと思う』
『君は不自由な生活を送っているのですか?』
またミラの手が止まった。トムが自分の出生について知れば、どう思うか----ハリー達のように気にしないか、それともドラコのように『捨て子』と言って罵るのか----ミラは意を決して手を動かした。
『私、マグルの孤児院育ち。自分が魔女だって去年知ったんだ』
インクがスッと日記に染み込んでいき、ミラは少し緊張した。
『なんと!君もマグルの孤児院出身だなんて!僕も君と同じです!』
「え…」と、ミラは思わず声をこぼしていた。トムの筆記が消えかけること、新しい文字が浮かび上がってきた。