第28章 異変
罰則が終わったのは、夜中の十二時を回るか回らない時間だった。マグル式でコゲを落とすのは一苦労したが、孤児院でやらされていたこともあり、特段苦痛だとは思わなかった。
むしろ、顔には出さないけれど、ミラの手際の良さに、スネイプ先生はきっと驚いていたに違いない。
グリフィンドールの談話室に戻ると、そこには誰もいなかった。途中でハリーとロンと会うこともなく、ミラは痛む右手をさすりながら、真っ直ぐ自分の部屋に向かった。
次の日、ハリーが罰則中に『声』を聞いたと聞かされた。ロックハート先生には聞こえなかったのだと、なんとも不思議な事象だった。ハリーにも心当たりがなく、結局わからないまま、この件は流された。
十月ももうすぐそこまで来ていた。九月最後の週末を、ミラは一人で学校を歩いていた。ノクチュアのご機嫌取りもあるが、時々自分の時間が欲しくてこうして歩き回ることが多い。
「ミラ,ちょっといい?」
午後も過ぎたそんな時間、通路で話しかけてきたのはジニーだった。
「何かあった?」
「ううん…何も。でも、これを渡したくて」
気のせいか、ジニーの顔色が悪い気がしたミラは、ジニーの顔を覗き込んだ。ジニーは弱くはみかみながら、上衣のポケットからあるものをミラに差し出した。
「遅くなってごめんなさい」
「これ…」
リドルの日記だった。ミラはすっかり忘れていた。
「色々あり過ぎて忘れてた…」
「トムがミラはどうしてるって、最近聞いてくるの」
「…トム、ねぇ…」
ミラは意味ありげにニヤニヤしながらジニーを見ると、ジニーは首がちぎれるんじゃないかってぐらい横に振った。
「違うわ!トムが名前で呼んでいいって!」
燃えるような髪の色と変わらないくらい、顔も真っ赤になり出したジニーに、ミラは冗談だよって言って、日記を受け取った。
「で、リドルは私に何か聞きたいことがあるの?」
「…わからないけど、車のことで心配してたわ」
「あー…そのこと書いたんだ…」
ーーあとで根掘り葉掘り聞かれそう…。
ミラは何となくそんな予感がした。