第26章 汚れた血
「アイツがハーマイオニーのことをなんとかって呼んだんだ。そしたらみんながカンカンに怒ってた…ものすごく酷い悪口だったんだと思う…」
「本当に酷い悪口さ----マルフォイのやつ、『汚れた血』って言いやがったんだ、ハグリッド---」
ロンが汗だらけの青い顔で言うと、また顔を洗面器に戻した。次のナメクジの波が来たらしい。
「そんなこと、本当に言ったのか!」
ハグリッドは激怒して、ハーマイオニーを見て唸り声を上げた。
「言ってたよ。ロンが…最低の侮辱だって言ってて…」
「アイツの思いつく限りの言葉さ」
ナメクジを吐いたロンが、また顔をあげた。
「『汚れた血』って、マグルから生まれたっていう意味の----つまり、両親とも魔法の使うことができないものを指す最低の侮辱した呼び方なんだ----」
「いいか、三人とも」と、ハグリッドが声を改めて話し出した。
「魔法使いには、例えばマルフォイ一族みたいなものを、みんなが『純潔』って呼ぶものもおる。そのせいで自分たちが誰よりも偉いって思っとる連中がおる----だが、ハーマイオニーに使えねぇ呪文は、今までひとっつもなかったぞ」
誇らしげにハグリッドがハーマイオニーを褒めるので、ハーマイオニーは頬を赤く染めた。
「他人のことをそんなふうに罵るなんて、ムカつくよ----『汚れた血』だなんて…卑しい血だって…狂ってるよ----どうせ、今時の魔法使いのほとんどは『半純血』だよ。もしマグルと結婚してなかったら、僕たちとっくに絶滅しちゃってたよ----ウッ」
またロンは洗面器に顔を突っ込んだ。
「そりゃ、ロンが奴に呪いをかけたくなるのも無理ねぇ----だけんど、お前さんの杖が逆噴射したのは、かえってよかったかもしれん」
「どうして?」
ミラはまるで、ドラコがナメクジを吐くのを見たかったと言わんばかりにハグリッドを見た。
「ルシウス・マルフォイが、学校に乗り込んで来おったかもしれんぞ、もし奴の息子に呪いをあっけちまってたら。少なくとも、お前さんは面倒に巻き込まれずに済んだっちゅうもんだ」
だからと言って、ナメクジを次々に口から出てくるのも、十分面倒なのでは…と、ハリーとミラは顔を見合わせた。