第26章 汚れた血
「ハグリッドのところへ連れて行こう、一番近いし」と、ハリーがミラとハーマイオニーに呼びかけたが、ミラはキーンと耳鳴りがしたように、周りの音が聞こえなくなった。
グツグツと腹の中にマグマが溢れるような感覚がし、ハリーとハーマイオニーがミラを何度呼びかけても、反応しなかった。
「ミラ…うええ……」
ロンがナメクジを口から吐き、えずきながらもミラの腕の上衣を掴んだ。
「アイツ…マルフォイは…ハーマイオニーのことを…最低の侮辱した…呼び方を、使ったんだ」
ロンは必死に言おうとしていたが、えずいて聞き取りづらく、スリザリンたちの笑い声もあって、ハーマイオニーやハリーには聞こえなかった。動かないミラに痺れを切らしたハリーが、ロンの腕を掴んで助け起こした。
反対側はハーマイオニーが付き添い、三人は歩き出した。
ミラは静かに立ち上がった。すでに地面から立ち上がってはいたが、ドラコはまだ笑っていた。ドラコの声が嫌に耳にまとわりつき、ドラコの元へ勢いよく走り出した。
ハッとドラコが気がついた時には、ミラのストレートパンチがドラコの鼻に直撃していた。勢いのまま殴ったせいで、ドラコは後ろへひっくり返った。上体を起こしたドラコは、殴られた鼻を手で押さえ、信じられないものを見るような目でミラを見上げていた。
鼻を手で抑えているが、赤い血が止まらずにドラコの手と顔を汚した。笑っていたスリザリンたちも、ぴたりと笑うのを辞めた。
「血で誰かを決めつけるなんて、腐ってる!アンタも同じ赤い血の色してるくせに!」
ミラは冷たい眼差しでドラコを見下ろした。ドラコは、ミラの目には嫌悪と、そして悲しみが混じっているような、複雑な感情が見え隠れしていた。しかし、殴られた手前、そんなことはどうでも良くなった。
「お前もだ、グローヴァー…教養も品位も欠ける、どうせお前の親も『汚れた血』だ。お前みたいな野蛮なやつ、手がつけれなくて捨てられて当然さ」
「うるさい…」
ミラは杖を取り出すと、ドラコに向けた。
「オスコーシ(口消えよ)」