第26章 汚れた血
競技場にはまだ誰も箒を飛ばして練習している様子はなかった。なぜかコリン・クリービーが最後部の座席でカメラを持ってスタンドにいた。三人は適当に空いている席に腰掛けてハリーを待っていると、ようやく更衣室から選手たちが出てきた。
どうやらこれから練習らしい。ロンはあり得ないと愚痴をこぼした。
ハリーが三人を見つけると、羨ましそうな目を向けられていることに気がついたミラは、膝の上に乗っているマーマレードのサンドイッチに浮遊呪文をかけて、ハリーの方に飛ばした。
ハリーはそれをキャッチすると、下がっていた口角が、ニコッと上がった。
「最高だよ、ミラ!」
サムズアップして、ミラは自身のいちごジャムのサンドイッチを頬張った。ハリーは急いでサンドイッチを口の中に押し込むと、箒にまたがって、地面を蹴って空中に舞い上がった。
ハリーとフレッドとジョージが、楽しそうに競走しながら競技場の周りを全速力で飛び回っていると、ミラも箒に乗りたくなった。しかし、ウッドのような熱い男とクィディッチの練習をやるとなると、また話は別だ。
競走していた三人の内、フレッドがスピードを落としてミラたちの前で止まった。
「サンドイッチってまだあったりする?」
どうやらハリーにあげたサンドイッチのところを見られていたらしい。
「あるよ」
ミラは隣のロンの膝の上にあったサンドイッチを素早く取ると、フレッドに渡した。
「サンキュー!」
「それは僕のだぞ!」
ロンが怒って取り返す前に、フレッドはサッとその場を離れてハリーとジョージの元へ戻ってしまった。
「ミラ!」
「だって私の分はハリーにあげちゃったし。それに、今食べているので四つ目じゃん」
「僕は育ち盛りなんだ!」
「ごめんごめん」
謝罪の気持ちがこもっているのかこもっていないのか、悪びれもなく言うミラに、ロンの機嫌は変わらないままだ。
「ロン、私のあげるわ」
そんな二人の様子を見かねたハーマイオニーが、ロンに自分のサンドイッチを差し出した。