第25章 友のため
「君、やきもち妬いてるんだ」
と、クラッブの首の太さくらいしかない身体のコリンも言い返した。
「妬いてる?この僕が、何にだ?僕はありがたいことに、額の真ん中に醜い傷なんか必要ないね。頭を切られて割られることで特別な人間になるなんて、僕はそう思わないのでね」
「ナメクジでも食らえ、マルフォイ」
「言葉に気をつけるんだね、ウィーズリー」
ドラコはせせら笑った。
「これ以上いざこざを起こしたら、君のママがお迎えに来て、学校から連れて帰るんだろう----今度ちょっとでも規則を破ったりしたら----」
ドラコの甲高い突き刺すような、モリーの声真似に、クラッブやゴイル、そして近くに居たスリザリンの五年生の一団が声をあげて笑い出した。
「ポッター、ウィーズリーが君のサイン入り写真が欲しいそうだ。彼の家一軒分よりもっと価値があるかもしれないな」
カッと、頭に血が上がったのはロンだけではなかった。スペロテープでぐるぐる巻にされた杖を取り出そうとしたロンの腕を、ミラは咄嗟に押さえ込んだ。
そして、自分の杖をドラコに向けた。
「口が無くなる前に消えて、ここから」
今にも呪いが出そうな口をなんとか我慢しながら、ミラはドラコを睨みつけた。ヒューと、スリザリンの上級生たちの誰かが口笛を吹いたのが、静かな中庭に響いて聞こえた。
下級生たちの小さないざこざだと思っているようだが、ドラコは顔には出してはいないものの、冷や汗を出る思いをしていた。ミラがただ杖を向けて脅しているのではないと、わかっているからだ。
しかし、大勢の生徒や上級生の手前、ましてや相手は女子のせいもあり、ドラコは引くに引けなかった。
「君も気を付けた方がいいんじゃないか、グローヴァー。親がいないからって、退学を言い渡されるかもしれないぞ」
「友達が侮辱されて何もしないくらいなら、退学になった方がマシだ」
ミラの冷たいアメジストの瞳が、真っ直ぐドラコを貫き、強く杖を握りしめた。
「っ…!」
ドラコは体を硬らせ、ミラが呪文を唱えようと、口を開けた時だった。
「気を付けて!」
ハーマイオニーがミラの側まで走り、ささやくと、ミラはつぶやきかけていた呪文をやめ、杖を素早く下へ下ろした。