第25章 友のため

　本を石垣の上に置くと、ミラはハリーとロンの間を抜けて、コリンの前に立ちはだかった。自分を見下ろす冷たいアメジストの瞳に、さっきまで興奮していたコリンは、顔を青ざめさせて震えていた。

「写真だけじゃなくて、一緒に並んでサインまで欲しいなんて、ハリーはアンタの家族を喜ばせるためにいるんじゃない－－－－わかったらさっさと消えて」
「ちょっとミラ…それは言い過ぎよ」

　ハーマイオニーが咎めたが、ミラは変わらずコリンを見下ろしていた。ロンは何も言わなかったが、ホグワーツ特急の同じコンパートメントに入った時のことを思い出した。
　ハリーが普通の学校生活を送りたいと、ミラは知っているからこそ、コリンのような人間には特に冷たくなる。触れればそこから凍りつきそうなほど、言葉も態度も氷柱となって刺々しい。

「アンタみたいなやつがいると－－－－」
「サイン入り写真？ポッター、君はサイン入り写真でも配ってるのかい？」
「…ほら、来たよ」

　水を得た魚のごとく、ドラコが面白いものを見つけたと、両脇に大柄で凶暴そうなクラッブとゴイルを引き連れてやって来た。痛烈な声が中庭に響き、周りにいた生徒たちの視線が集まった。

　ミラたちがうんざりした視線をドラコに向けると、ドラコはコリンのすぐ後ろで立ち止まった。

「みんな、並べよ！ハリー・ポッターがサイン入り写真を配るそうだ！」

　群がってきた生徒たちに聞こえるように、大声で呼びかけた。

「黙れ、マルフォイ！僕はそんなことしていないぞ！」

　ハリーは怒って拳を握り締めて言った。

「サインが欲しいのはアンタでしょ」

　ミラはキッパリとドラコに向かって言うと、ドラコは不快なものを見るような目でミラを見た。

「またポッターのお守りか？それとも君の許可がなければ、ポッターのサインはもらえないのかい？」

　ミラが目を細めてドラコを睨むと、ドラコも目を細めてミラを睨みつけた。

「今日は大きな友達がいるから、いつもより強気じゃないか」
「本屋では負けてたもんな」
「うるさいぞ、ウィーズリー！」

　ロンがミラの加勢に入り、ミラはニヤッと笑った。