第25章 友のため
「あのババアを本物の豚に変えて、豚小屋に送ってやるのもいいなって」
ハリーとロンは、サラリと恐ろしいことを言うミラを、息を呑んで見つめた。冷たい色をしたアメジストの瞳が、本から二人に移ると、その冷たさは一瞬で影を潜めた。
「----なーんて、嘘に決まってるだろ!」
「…冗談キツイぜ」
ハハハと、ロンは乾いた笑いを漏らした。しかしハリーだけは、今のはきっと本気だと、そんな気がしていた。去年ハグリッドが従兄弟のダドリーのお尻に豚の尻尾を生やした時でさえ、いい気味だと自分が思ったからだ。
「そ、そういえば今年のクィディッチこそ、グリフィンドールの優勝を目指さないと!」
ロンは無理やり話題を変えたが、ミラは気にすることなく本の続きを読み始めた。
「ウッドがまた新しい練習を考えてるよ」
「前回は君がいなかったけど、今年はいけるさ」
「うん、頑張るよ----ん?」
ハリーが何かに気が付いて、ロンから顔を逸らすと、ロンもハリーと同じ方を見た。ハーマイオニーは本に集中していたが、ミラも同じように顔をあげ、ハリーたちが見ている方角を伺った。
薄茶色の髪の毛をした小さな少年が、顔を赤くさせながら、マグルのカメラを持ってハリーの元へやって来た。
「ハリー、元気?ぼく----ぼくはコリン・クリービー。ぼくもグリフィンドールです。あの、もし…構わなかったら----写真を撮ってもいいですか?」
「写真?」
ハリーは首を傾げた。ミラはスッと目を細めて、怪訝そうにコリンを見たが、コリンは目の前にいるハリーに夢中で、気が付いていなかった。コリンは熱心にハリーのことについて語り、写真は自分の父に送るのだと興奮で震えていた。
「君の写真が撮れたら----もし、君の友達が撮ってもらえるなら、ぼくが君と並んで立ってもいいですか?それから…写真にサインも」
してくれませんか?と、コリンが言い終わる前に、バンっと大きな音を立てて本を閉じたミラが、コリンを指すような視線で見つめていた。
「図々しんだけど、アンタ」
本に集中していたハーマイオニーも、流石に大きな音と、ミラの低い声にびっくりして本から顔を上げた。