第25章 友のため
ハリーのヘドウィグは姿を表さなかったが、きっとまだ昨日のことで怒っているのだろうとミラは勝手にそう思った。
あちこちで手紙や小包が落とされていく中、ミラはノクチュアの背を撫でて、昨日のことを謝った。ホゥ、と鳴いたノクチュアが何を言っているかわからないが、トーストをもらって機嫌が良くなったようだ。
滑らかな羽の上に手を滑らせて癒やされていると、何やら大きな灰色の塊が、ハーマイオニーの傍に置いてあった水差しの中に落ち、周りのみんなにミルクと羽の飛沫を撒き散らした。
「エロール!」
ロンが慌てて席から立ち上がり、エロールを引き抜いた。エロールは気絶していて、足を上に突き出し、嘴には赤い封筒を咥えていた。
「大変だ…」
「大丈夫よ、まだ生きてるわ」
「そっちじゃないよ----こっちだ」
ロンが絶望したような顔で、エロールから赤い封筒を、震える手で引き抜いた。
「それがどうかしたの?」
ミラ、ハリー、ハーマイオニーは意味がわからない顔をしていて、ネビルだけがその深刻さを理解していた。ロンとネビルは、今にもその封筒が爆発しそうな目つきをしていた。
「母さんたら----『吠える手紙』を寄越しやがった…」
「開けた方がいいよ、ロン…開けないともっと酷い事になる…僕のばあちゃんも僕に寄越したことがあるんだけど----放っておいたら----すっごく酷かったよ」
その時を思い出しているネビルの顔は、ありありと恐怖が浮かんでいた。
「だから、『吠える手紙』って何?」
ハリーがロンに尋ねるも、ロンは赤い封筒に全神経を集中させていた。封筒の四隅からは煙が上がり始め、ミラはノクチュアをトーストを咥えさせると、飛び立つように即足した。
ロンが封筒を開封すると、ネビルは急いで耳に指を突っ込んだ。
そしてミラ、ハリー、ハーマイオニーは、どうしてロンが手紙をあんなに恐れているか、理由がすぐに分かった。大広間中に広がる吠えるような声が響き、パラパラと天井から埃が落ちてきた。
『ロナルド・ウィーズリー!!車を勝手に持ち出すなんて、そんな子に育てた覚えはありませんっ!!!車がなくなっているのを見て、私とお父さんがどんな気持ちだったか、お前は少しでも考えたのですか!!!』