第24章 車通学
「グリフィンドールの減点はしません」
この一言で、ハリーはどれだけ気分が落ち着いたことだろう。あまり寮の点を気にしないミラにとって、それはどうでも良いことだったが、隣のハリーから安心感が伝わってきた。
「ただし、三人とも罰則は受けることになります」
マクゴナガル先生はまた杖を振ると、スネイプ先生の机の上に、三人分の食事が現れた。大きなサンドイッチの皿、ゴブレットが三つ、冷たいかぼちゃジュースのボトル。
「ここでお食べなさい。終わったら真っ直ぐに寮にお帰りなさい----私も、歓迎会のほうに戻らなければなりません」
先生はそれだけ言うと、扉を閉めて行ってしまった。扉が完全に閉まり切ると、ロンは低く長い口笛を吹いた。
「もうダメかと思ったよ」
「僕も」
「なかなかスリリングな新学期のスタートになったもんだ」
三人はサンドイッチを頬張りながら、安心の声を漏らした。
「はぁ…歓迎会行きたかったなぁ…」
「多分、行けば目立つと考えたんじゃない?新聞をもう手に入れた人たちもいるかもしれない」
「車を飛ばして到着したのがかっこいいって、他の生徒に思わせちゃいけないって思ったんだよ」
三人は食事を終えると、スネイプ先生の部屋を出て、静かな城の中を歩き出した。歓迎会は終わっているようで、歩き慣れたグリフィンドール塔までとぼとぼと歩いた。
やっとピンクの絹のドレスを着た太った婦人の肖像画の前についた。
「『合言葉』は?」
「「「あ」」」
三人は顔を合わせた。監督生に会っていないせいで、誰も知らなかったのだ。しかし、それも杞憂で終わった。誰かが後ろから駆け足でやってきた。振りかえると、ハーマイオニーだった。
「やっと見つけた! いったいどこに行ってたの?バカバカしい噂が流れて ----誰かが言ってたけど、あなたたちが空飛ぶ車で墜落して退校処分になったって」
「そうだけど、退校処分にはならなかった」
と、ハリーはハーマイオニーを安心させた。
「まさか、ほんとに空を飛んでここに来たの?」
「うん。快適な旅だったよ----最後は死ぬかもって思ったけど」
ミラはケラケラ笑ったが、誰も笑わなかった。
「説教はよしてくれよな----新しい合言葉教えてくれよ」
「『ワトルバード(ミミダレミツスイ)』よ」