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【HP】怪鳥の子

第24章 車通学


 定期的に列車を確認しながら、三人は北へ北へと向かった。都会のロンドンを抜け、田舎の田園風景が広がっていたり、教会を囲むように小さな家が並んでいる村々や、ロンドン以外の大きな都市もいくつか通り過ぎた。

 ヘドウィグやノクチュアが手紙を届けるために、色んなところを飛んでいるのかと思うと、ミラは少し羨ましく思えた。どんなに足掻いても、自分は人間で、自由に羽ばたける羽もない。孤児院を出ていったとしても、ホグワーツを卒業するまでに、金庫にあるお金を宿や食費に費やしてしまうだろう。
 何より、ハリーをあの家に独り残してどこかに行こうなどと、できるわけがない。もしハリーが家出をしようと持ちかけたら、喜んでやるつもりではあるが----。


 そして空が茜色の空になる頃、列車を確認し終わった後、また上昇しようとロンがアクセルを踏むと、エンジンから甲高い声が上がった。

「…今のは?」

 ミラは不安な声でロンに尋ねた。

「多分疲れただけだ…こんなに遠くに来たのだって初めてだし…」


 空はだんだん暗くなり、車の異常な音もどんどん大きくなっていった。三人は聞こえないフリをして、不安をなんとか抑え込んだ。ミラも不安を煽らないよう口を閉じ、大人しく後部座席に座っていた。

「そんなに遠くないよ、もうすぐさ」

 ロンは心配そうに計器型を叩きながら呟いた。



 夜空の星がしっかり見える頃になると、三人はまた下へ下降した。そろそろホグワーツについてもおかしくないと、三人は暗黒の中で目を凝らした。


「二人とも!真っ正面だ!」


 ハリーが大声を出すと、ミラは横の窓から顔を離し、ハリーとロンの座席に捕まって前方を見た。真っ暗な湖の向こうの崖の上に聳え立つ、ホグワーツを見つけた。

 しかし、車は小刻みに震え始め、失速し始めた。

「頑張れ…もう少しだ、頑張ってくれよ…」

 ロンがハンドルを揺すりながら、優しく問いかけたが、車の揺れは段々激しくなり、エンジンは呻きだした。ハリーとミラは座席の掴まれる所を、しっかりと握りしめた。

 車は湖の方へ傾いてき、ロンは指の関節が白くなるほど、強くハンドルを握りしめていた。


「頑張れったら」


 と、その時----ガタン、ブスン、ブスンっと大きな音をたてて、エンジンが完全に止まった。
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