第24章 車通学
「またいつここに来られるのだろう」と、ミラとハリーは最後に一眼、遠ざかっていく『隠れ穴』を見送った----のだが。
「いけない!フィリバスターの花火を忘れた!!!」
ジョージが昨夜打ち上げた花火の箱を忘れたせいで、出発してすぐのことだった。ジョージが戻り、また運転が再開して五分後のことだった。
「父さん戻って!箒を玄関前に置いたままだ!!」
フレッドは慌てて車から出ると、箒を取りに走って行った。やっと高速道路に着く頃になると、今度はジニーが金切声を上げた。
「日記!大切な日記を忘れたわ!!!」
シニーが戻って、やっと車に乗り込んだ頃には、当初の予定より遅れに遅れ、みんなはイライラした様子だった。去年もウィーズリー家が忙しなく駅で移動していたのには、こう言う理由があったのだと、ミラはこっそり思った。
キングスクロス駅に着いたのは、汽車が出発する十一時一五分前だった。みんなで大慌てで『9と3/4番線』のプラットフォームを目指した。出発五分前になんとかそこへた取り付くと、パーシー、アーサー、フレット、ジョージ、そしてジニーはモリーと一緒に壁の向こうへ消えていった。
「一緒に行こう、もう一分しかない」
ロンがそういうと、前にハリーとロン、後ろにミラが並んで壁に向かって歩き始めた。少し勢いがつき始め、さぁ壁の中を潜る----その時だった。
ガッシャーン----二つのカートが壁にぶつかり、後ろに跳ね返った。ミラは前に二人が弾かれるのを見て、慌てて自分のカートを押すのをやめ、止まろうと必死に足に力を込めた。
なんとか二人には激突せず、二次災害は免れたものの、ハリーとロンの荷物はあちらこちらに飛んでいった。ヘドウィグの籠は床の上で跳ね、ギャーギャーと怒る声をあげなら転がっていた。ミラは慌ててヘドウィグを拾い上げた。
「ハリー、ロン、大丈夫!?」
「うん…」
ハリーは痛そうに脇腹を押さえていた。ロンの方は特に怪我はなく、カートから落ちたトランクを拾っていた。
三人は周りの人たちからジロジロと見られていることに気が付き、慌てて落ちたものを全て拾い上げた。
「どうしてどうれなかったんだろう?」
「わからない…」
「このままじゃ列車に乗れない」
三人はヒソヒソと会話をした。