第23章 秘密の交換日記
絶対にこのノートだと、ミラには確信はあった。ジニーが日記をコソコソ書いていたときも、眠ったふりをしてどこにノートを閉まっているかもしっかり見ていたのだ。
ミラはテーブルに置かれた羽ペンを手に取り、ペン先をインク瓶に浸した。日記の後ろに近いページの場所を机の上に開くと、開いたページの上の部分へスーッと線を引いた。
あとでジニーにインクの跡が見つかったとしても、前の持ち主のだと言い切れば、逃れられるとミラは思っていた----しかし、ミラの予想とは大きく違い、引かれたインクの線はスッと日記に染み込んで、最後には何も、インクのシミ一つも無くなってしまった。
(なに、これ…)
ページをめくっても、裏うつり一つもない。ミラはまた羽ペンをインク瓶に浸し、今度は日記に文字を書いた。
『この日記は何?正体を表せ』
インクはスッとその言葉を吸い込むように消えた。
(ジニーの筆跡がないのも、このせいだったんだ)
変な日記だと思っていると、真っ白のページにミラが書いたことのない文字が浮き上がってきた。ミラは息を潜めながら、一度ジニーが眠っているか確認をした。気持ち良さげにジニーは眠っていて、起きる気配はない。
ミラは日記に向き直ると、浮き上がった文字を読み始めた。
『こんにちは、僕はトム・リドルです。君はどういう風にしてこの日記を見つけたのですか?』
文字は徐々に消え出し、ミラは慌ててその下に返事を書き込んだ。
『友達がずっとこの日記に夢中だったから心配で調べただけ』
ミラの書いた文字も吸い込まれるように消えていくと、次の文章が浮き上がってきた。
『君はもしかしてミラですか?ジニーがあなたとは部屋をルームシェアしていると教えてくれました』
『はい、私はミラ・グローヴァーです。ジニーとはどんなやりとりをしているの?』
『それは言えません。それは彼女のプライバシーに関わります』
簡単には答えてくれないか、とミラはため息をついた。
『内容は言えませんが、彼女の悩み事の相談をしています』