第23章 秘密の交換日記
フローリッシュ・アンド・ブロッツ書店の出来事からしばらくたち、ホグワーツに戻るまで一週間を切っていた。そんなジニーの部屋を借りているミラは、最近ジニーの様子がおかしいことに気が付いていた。
いつもはおかしな話をしながら一緒に寝ていたのに、ジニーは少しソワソワしたような、モジモジしたような様子で「日記を書き始めたの」と、言った。確かに個人的なものであり、ミラも納得して先に眠ることが多くなった。
特に気にすることでもない、そう思っていたが、部屋を共有する以上ジニーの日記へのハマり具合が少し異常じゃないかと心配になっていた。あるときは眠ったフリをして様子を見ていたが、異常に長い時間日記を書いていることに違和感を感じたが、だからと言って他の兄弟やモリーに「ジニーが毎晩遅くまで日記を書いている」と言っても、誰もさほど気にもしないだろう。
(何もなければいいけど…)
そしてある日の朝早く、ミラはジニーよりも、いや、いつもより少し早い時間にベットから抜け出した。音を立てないように、忍足でジニーの使っている古い机に向かった。
そして、いつもジニーが閉まっている日記の入った引き出しを開けて、ジニーの好みとは思えない古めかしい黒い表紙の本を手に取った。ミラはその本の表紙を隅々まで見ると、剥がれかけた年数文字が今から五十年以上前のものだとわかった。
最初のページを捲ると、『T.M.リドル』と記されたインクが滲んでいた。
「…リドル?」
一体誰のものなんだろうかと、ミラは思った。次のページをめくってもいいものなのか----ジニーのプライバシーを見るのも気が引けたが、最初のページを覗くだけ、覗いたらすぐに元の場所に戻すと、ミラは決心してページを捲った。
「…真っ白…?」
不思議なことにその本のどこにも、ジニーの筆跡の跡がなかった。インク一滴も垂れていない不思議な本に、ミラは全てのページを捲ってみたが、やはりどこにも、ジニーの字は見当たらなかった。
透明インクを使用しているのか?と、思ったが、ジニーの机の上に置かれたインクは普通のものであった。