第20章 隠れ穴にご招待
「お帰りなさい、アーサー」
モリーはパッと本から顔を上げると、本をソファーに置いて、ロンの父と思われる男に近付いて行った。ミラもこのチャンスを逃す手はないと、慌ててモリーの後に続いた。
アーサーは細身で禿げていたが、わずかに残った髪の毛がロンや双子の髪の毛と同じ色をしていた。ハリーたちは庭から走ってきたのか、息を弾ませながら庭から戻ってきた。
来ている長い緑色のローブは埃っぽくくたびれていて、余計にアーサーが疲れているように見せた。事実アーサーは台所の椅子に倒れ込むように座り込んで、メガネを外して目を瞑っていた。
「酷い夜だったよ」
アーサーの周りに、モリー以外のみんなが空いている椅子に座り、興味津々にアーサーの話しに耳を傾けていた。
「九件も抜き打ち調査したよ。九件もだぞ!マンダンガス・フレッチャーのやつめ、私がちょっと後ろを向いた隙に呪いをかけようとして----」
おじさんは大きなため息をつくと、モリーが差し出したお茶を一口飲んで一息ついた。
「何か面白そうなものはあった、父さん?」
フレッドが早く知りたそうな顔で、アーサーに聞いた。
「私が押収したのはせいぜい、縮む鍵が数個と、噛みつくやかんが一個だけだった」
と、つまらなさそうにアーサーは欠伸をした。アーサーは同じ魔法族の者がマグルを困らせる魔法をかけて困ると話していると、タイミングを待っていたのか、モリーがすかさず話しに入ってきた。
「たとえば車なんか?」
「く、車?モリー、あの車かい?」
「ええ、そうです」
眠たそうな目をしていたアーサーは、モリーの一言で驚いて、パッチリと目が開いてしまった。
「何処かの魔法使いが錆びついたおんぼろ車を買ってきて、奥さんには調べるために分解すると言って、実は呪文をかけて空を飛べるようにしたというお話があります」
「母さん、わかってもらえると思うが、あー…その人は法律をわかっていて、ちゃんと許す範囲でやってるんだ----あの車もそうだが、その車を飛ばすつもりがなければ、たとえ飛行能力を持っていたとしても、使わなければ----」
「アーサー・ウィーズリー。あなたが法律を作ったときに、しっかりと抜け道を書き込んだんでしょう!」
モリーは声を張り上げた。ミラはこっそり、モリーに見えないようにフフッと小さく笑った。