第20章 隠れ穴にご招待
モリーは五人の前にピタリと止まると、両手を後ろに手を当てて、後ろめたそうな顔をしている一人を睨みつけていた。可愛い花柄のエプロンのポケットには、モリーのと思われる杖が顔をのぞかせていた。
「それで?」
「おはよう、母さん」
ジョージは務めて明るく朗らかに、愛想良く挨拶をしたが、モリーには全く通用しなかった。
「母さんがどんなに心配したか、あなたたち、わかってるの?」
「母さん、ごめんなさい。でも、僕たちどうしても----」
キングスクロス駅では聞いたことがない、低くて凄みの効いた声がモリーから発せられ、ハリーとミラはヒヤヒヤした。
「ベッドは空っぽ!メモも置いてない!車は消えてる----事故でも起こしたかもしれない----心配で心配で気が狂いそうだったわ----わかってるの?----こんなことははじめてだわ----お父さんがお帰りになったら覚悟なさい。ビルやチャーリーやパーシーは、こんな苦労はかけなかったのに----」
「パーフェクト・パーシー」
「あなたはパーシーの爪の垢でも煎じて飲みなさい!」
ピシャリとモリーはフレッドの胸に指を突きつけて怒鳴った。
「あなたたち、死んだかもしれないのよ。姿を見られたかもしれないのよ。 お父さんが仕事を失うことになったかもしれないのよ----」
いつまで怒られ続けないといけないんだろうと、ミラは途中から話を聞いていなかった。ロンは顔を下に向けていたし、フレッドとジョージもいつものお喋りやおふざけは一切なく、反省している----ように見えた。
たまたま目が合ったジョージが、困ったように微笑むと、ミラも同じように微笑み返した。
「話しをちゃんと聞いているの!」
おばさんの鋭い声がジョージにかかり、ジョージは慌てて首を振った。そして声が枯れだした頃になって、モリーはハリーとミラに向き直った。
「まぁ、ハリー、ミラ、よく来てくださったわね。家へ入って、朝食をどうぞ」
モリーはそう言うと、向きを変えて家のほうに歩き出した。嵐が過ぎ去ったのごとく、ポカンとしていたハリーとミラに、ロンが「大丈夫だから」と呟いた。