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【HP】怪鳥の子

第20章 隠れ穴にご招待


 オッタリー・セント・キャッチポール、村から少し離れたところに、ロンたちの家があるとジョージが教えてくれた。空飛ぶ車は徐々に高度を下げ、地面に無事着陸した。

 「着地成功!」と、フレッドが嬉しそうに言いながら、小さな庭にある、ボロボロの車庫の脇に車を止めた。ハリーとミラは車から外へ出ると、やっとロンの家を見ることができた。

 かつては大きな石造りの豚小屋だったものかもしれない。あっちこっちに部屋をくっつけていて、数階建ての家になったように見えた。くねくねと曲がっていたし、まるで魔法で支えられているようだと、実際ハリーとミラはそう思った。
 
 赤い屋根に煙突が四、五本、ちょこんと乗っかっていた。

 入り口近くに表示板が少し傾いて立って、『巣穴』と書かれていた。玄関の戸のまわりに、ゴム長靴がごちゃ混ぜになって転がり、錆びついた大鍋も置かれていた。丸々と太った茶色の鶏が数羽、庭のあちこちで餌をついばんでいる。


「大したことないだろ」

 ロンはそう言ったが、ハリーとミラは首を振った。

「すごいよ」
「毎年ここに来たいくらい」

 「そう思うだろ、ハリー?」と、ミラはハリーに尋ねると、幸せそうな顔をしたハリーが「うん」と頷いた。ロンは少し照れ臭そうに首筋に手を当てた。

「さぁさ、みんなそーっと静かに二階に行くんだ」

 フレッドがミラの背後に立ち、両肩をつかんで三人に言った。

「母さんが朝食ですよって呼ぶまで待つんだ。それから、ロン、お前が下に跳び撥ねながら降りて行って言うんだ。『母さん、夜のあいだに誰が来たと思う!』って。そうすりゃハリーとミラを見て母さんは大喜びで、俺たちが車を飛ばしたなんてことを知らなくて済む」
「了解。それじゃハリー、ミラ、僕の寝室は----」


 ロンが青ざめて言葉を詰まらせた。四人は急に静かになったロンをおかしく思い振り返ると、ウィーズリー夫人のモリーが庭の向こうから鶏を蹴散らして、猛然と突き進んできた。

「あー」
「だめだ、こりゃ」

 フレッドとジョージが諦めたような声を漏らした。小柄な丸っこい、やさしそうな顔の女性だが、鋭い牙を剥いた虎にそっくりなその姿は、なかなか見ごたえがあり、ハリーもミラも背筋を勝手にスッと伸びた。
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