第20章 隠れ穴にご招待
気が済んだのか、ミス・メアリーは落ち着きを取り戻すと、ミラを部屋に閉じ込めた。外出は今後禁止となり、トイレと掃除以外は院内を歩くこともできなくなった。そして今晩は夕飯は抜きだ。
ミラは力無くベッドに倒れ込むと、鉄格子の奥に見えたハリーを思い出した。無力感がぐるぐると胸の中を泳いで、ミラは目を瞑った。たった一人の、家族と思っている親友さえ救えない自分に、嫌気がさした。
(ハリー…ごめん、私……助けてあげられなかった…)
発狂しそうになる心を落ち着かせるように、目を瞑った。それからどれくらい経っただろう、知らぬ間に眠りについていた様だった。
薄いカーテンに強い光が入り込み、部屋中が明るくなった。あまりの眩しさに、ミラはうっすらと目を開けた。月明かりや、火の光にしては強すぎると思い、ミラは身を起こして窓に近づいた。
カーテンを開けて窓の外を見ると、よく知っている人物が目に飛び込んできた。ミラは慌てて窓を開けて、その人物を確認した。
「ハリー!?それに、ロン!?」
ミラの部屋は2階にあった。どうやって二人が2階に部屋までと驚いていると、よく見ると青い旧式の自動車の後部座席に二人が乗っていた。運転席と助手席には、ロンの双子の兄、フレッドとジョージがいた。
「事情は後で話す!荷物を後ろに乗せて!」
フレッドが車を向きを変え、後ろのトランクルームを開けると、すでにハリーのトランクが中に入っていた。ミラも慌ててベッドの下にあったトランクを引っ張り出し、全ての荷物を詰め込んだ。
幸い出している荷物は少なく、ミラは重たいトランクをなんとか持ち上げ、トランクルームに入れ込んだ。
またフレッドが向きを変えると、後部座席に座っているハリーがドアを開けた。ミラはノクチュアの空の籠を手も持つと、窓際から体半分を出した。
「行こう、ミラ!」
伸ばされた手を、ミラは迷うことなく手を取った。ハリーに車の中に引っ張り込まれた時、ミラは信じられない気持ちで孤児院の、自分の部屋を見た。
明日の朝、ミラのいない部屋を見たミス・メアリーはどう思うだろうか?ミラは鼻を鳴らし、小さくなっていく孤児院から顔を逸らした。