第20章 隠れ穴にご招待
ガタガタミシミシと家の窓が激しく揺れ出した。キィィィィイン、と耳鳴りがしていたが、ミラは恨みがましくバーノン伯父さんを睨み続けていた。植え込みの葉がガサガサと煩く鳴り、その異様な雰囲気を感じ取ったバーノン伯父さんは、目の前で自分を睨み付けている恐ろしいアメジストの瞳に恐々とした。
家の中からは妻のペチュニアと、息子のダドリーの悲鳴が聞こえてきた。
「それ以上何かやってみろ!あいつがどうなってもいいのか!!!」
ピタリ、それは突然全てが止まった。代わりにヌルリ、とミラの鼻の片方から鼻血が出た。
「わかったらとっとと失せろ!!このバケモノ!!!」
バタン!とドアが力強く閉められた。
耳鳴りが収まると、今まで聞こえなかった夏の音が耳に飛び込んできた。肌を焼く太陽の暑さも、遅れて肌に感じた。ミラはフラリと立ち上がると、ボタボタ流れてくる鼻血が地面に落ちていくのを見つめた。
手で血を拭うと、ミラは孤児院に向かって歩き出した。
良いことは続かない。孤児院に戻ると、院長のミス・メアリーが何やら嬉しそうにミラの帰りを待っていた。応接室にそのまま連れて行かれると、目の前に空いた手紙を突きつけられた。
「これは、どういうこと?」
笑顔だが怒りを堪えている様子のミス・メアリーに、ミラは向けられた手紙の内容を見た。手紙の宛先は魔法省、魔法不適正使用取締局からだった。
「勝手に人の手紙を見ないでください」
突然、左の頬にパシンと衝撃が走った。ジンジンと熱を持ち、痛み出した頬。ミラは静かにミス・メアリーを見据えると、もう彼女は笑ってはいなかった。
ハリーの家のバーノン伯父さんの様に、顔は赤く膨れた風船のようになり、目はこれほどかと言うほど釣り上がっていた。
「お前はこのことを隠して私を脅していたな!気に入らないんだよ、その態度が!!その気持ち悪い目は見せないでって何度言えば気が済むんだい!!碌でもない学校に行って、気持ち悪いったらありゃしない!!!」
ミス・メアリーは大声でミラを怒鳴りつけた。右から左へ、左から右へ、ミラは怒鳴っているミス・メアリーの口を、ぼんやりと見つめていた。