第19章 憂鬱な夏休み【秘密の部屋編】
朝から孤児達のご飯作りが終わると、洗濯、草むしり、院内の掃除、とにかくミス・メアリーはミラに仕事をやらせたがった。空いた時間はホグワーツから出題された宿題を終わらせようと、消灯時間ギリギリまでやっていた。
ミラはまだハリーよりマシな方だった。教科書や杖はミス・メアリーから没収されることはなかったし、フクロウも自由にさせてもらえている(数週間前、ノクチュアを外には出してはいけないと注意されたが、ノクチュアの鳴き声が余りにも酷かった為、外に出す許可を得た)。
逆にハリーは教科書や杖、箒全てが鍵のかかった部屋に入れられ、ヘドウィグは軟禁状態だと話しを聞いた時は、言葉が出なかった。ハリーと一緒に勉強しようと声をかけたが、それは数日の内にバーノン伯父さんにバレてしまい、ハリーは外出時間までも制限されてしまった。
ハリーが少しでも楽になるように、出来上がった宿題はハリーに見せて、写せるようにしようと、ミラは少しでも宿題を頑張った。
7月31日は、ハリーの誕生日だ。なんとか孤児院での仕事を終わらせ、走ってハリーの家まで行くと、ハリーは前の庭の花壇を整えていた。薔薇の枝も整えており、ハリーのガーデニングのセンスに拍手を送りたくなった。
焦げ付くような太陽がハリーの首筋をジリジリと焼いていて、赤くなっていた。
「あの有名なハリー・ポッターのこのざまを、見せてやりたいよ」
「まさかマグルの世界でこんな扱いを受けてるなんて、聞いたらびっくりするだろうよ」
「!」
吐き捨てるように呟いた言葉に、返事が来るとは思ってもおらず、ハリーは驚いて花壇から顔を上げた。そこには、帽子も被っていないミラがニヒルに笑ってハリーを見下ろしていた。
「相変わらずここの家のマグルは酷い扱いをするもんだ」
「ミラ!」
ハリーは立ち上がると、ミラを勢いよく抱きしめた。ミラもハリーの背に腕を回すと、ハリーが凄く汗ばんでいるのがわかった。
「誕生日おめでとう、ハリー」
「ミラも、誕生日おめでとう」
ミラは手に持っていた手紙と、ホグワーツでお見舞いでもらった食べきれなかったお菓子の一つを持ってハリーに渡した。