第19章 憂鬱な夏休み【秘密の部屋編】
代わり映えのしない小さな白い部屋に、エアコンなんてものは存在しない。うっすらと身体中が汗ばんでいるのを感じながら、ミラはベッドから身を起こした。薄いカーテン越しから、まだ日が上がるには少し早い、日差しが入り込もうとしていた。
カーテンを開けて窓を開けると、涼しい風が部屋に入り込んで来た。近くの木に止まっていたノクチュアが、窓が開いたことがわかるとスーッと優雅に飛んで、窓際に止まった。
「----やっぱり手紙はない、か」
ノクチュアの頭を撫でながら、ミラはため息をついた。
(どうして----返事をくれないんだろう----)
夏休みに入ってから、ロンとハーマイオニーから一通の手紙も届かなかった。試しに自分から何回か送ってみたものの、返信はなかった。それはハリーにもだった。時々公園で落ち合ったハリーと話しをすると、ハリーも二人から手紙をもらっていないとわかった。
「----会いたくなくなっちゃったのかな」
「まさか、そんな----」
珍しく弱音を吐いてしまった。ハリーもそれはないと言いたかったが、ミラの言葉は否定できなかった。なんならあのドラコが現れて、嫌味でもいいから聞きたいなんて----。
ノクチュアを外に離し、埋め込み式クローゼットから色褪せてつぎはぎだらけの服とスボンを取り出し、着替えていると、ドンドンドン!と、けたたましいドアをノックする音が聞こえてきた。
「早く食事の用意をしなさい!」
「今行きます、ミス・メアリー!」
苛立たしげな声で返事を返すと、ミス・メアリーが部屋から遠ざかっていくのがわかった。ぶつぶつと文句を言っているのもしっかり聞こえているが、もう慣れてしまった。
孤児院に戻ってから数週間は、ミス・メアリーが何か文句を言うたびに出鱈目な呪文を呟いて慌てふためく姿を見て楽しんだ。腫れ物を扱うかの如く、以前のように大量の仕事を押し付けることはなかったが、ここでの生活はあまり変わらない。
ミラがいない間、他の孤児にはミラは頭のおかしい人たちが行っている学校にいると説明がされていたが、逆に他と関わらずに済んで気にもならなかった。