第18章 夏の知らせ
「おい、面倒ごとは起こすな」
ドラコがそう言うと、二人は手を収めたものの、ミラへの警戒は緩めなかった。
「ちょっとドラコと話があるから出てってくれないか?」
ミラも目の前に立つ二人を鋭く見つめながら、コンパートメントから出ていくよう指示した。クラッブとゴイルは一度ドラコを見ると、ドラコはミラをめんどくさそうに見たが、ミラも引く気はないとわかると、うなずいて二人を外で待っているように言った。
出て行ったクラッブとゴイルのいないコンパートメントには、ドラコと車内販売で売られていたお菓子がたくさんあちらこちらにあり、ミラは落ちたお菓子を踏まないように、ドラコの前の空いているシートに座った。
「寮対抗杯は惜しかったね、二位になった気分はどう?」
「わざわざそんなくだらないことを聞きにきたのか?」
ドラコは思い出したくもないと、窓の外を忌々しく見た。
「随分暇なんだな、お前は」
「ちょっとからかいに来ただけさ」
ニヤッと笑ってみせると、ドラコはますます眉間に皺がよった。
「それだけか?生憎ぼくはお前と違って忙しいんだ」
「まさか----えーっと----」
「なんだ」
勿体ぶるようなミラに、ドラコは腕を組んで即足した。
「お----お見舞い来てくれてありがとう、大事に使うから!来学期もよろしく!」
ミラは早口でそれだけ言うと、立ち上がってコンパートメントから飛び出した。
「おい!」
ドラコの呼びかけにも振り返らず、ミラはハリー達のいるコンパートメントまで駆け足で戻った。ずっとドラコにはお礼を言わなければと思っていたが、学校ではタイミングが合わず、ずっと機会を逃していた。
しかしいざドラコを前にして話をしようとすると、何故か緊張してしまった。早口で捲し立ててしまい、ミラはドラコがしっかり聞き取れたか心配だったが、もう一度戻って言う勇気はなかった。