第17章 目覚め
食事の手を止めて、ミラは箱に手を伸ばした。手の届く範囲だったおかげで、難なくその箱を取ることができた。深緑色の長方形の箱はそこまで大きくなく、白色のリボンが巻かれていた。どこか高級感があるような箱は、お菓子の山から浮いているような存在だった。
ミラは恐る恐るリボンを解き、箱を開けてみた。中にはブラシとメッセージカードが添えられていた。メッセージカードを見てみると、名前は無かったが、見たことのある筆跡とメッセージに、心当たりがあった。
『寝癖くらい直せ』
----ドラコ? ミラは信じられない気持ちだった。でも確かに筆跡はドラコのものだ。何故なら魔法薬の授業の時、レポートを提出する時に見せてもらったことがあった。
ロンの時々ミミズがはったような筆跡に比べると、ドラコの字は綺麗でしっかりと読める筆跡をしていた。見間違えるわけがなかった。
恐る恐るブラシを取り、じっくり観察してみると、ブラシは何の毛が使われているかはわからなかったが、毛質は柔らかかった。裏返してみると、取手の部分もだが、黒いべっこうのような、それとも骨のようなものに、シンプルだが目を凝らすと、細かい花のデザインが彫られていた。
「…」
体がムズムズするような感覚がしたミラは、一度ブラシを箱に戻した。そしてジッとブラシを睨みつけ、そっともう一度手に取った。呪われていないよなと疑いながらも、数日梳かしていない髪にブラシをあてた。
特に髪の毛が抜け落ちるという事もなく、まったく髪が引っかからないことにミラは驚きを隠せなかった。ハーマイオニーのブラシでさえ、時々絡まった髪に引っかかっていたのに、このブラシはそれが一切無かった。
そして髪を梳かした部分を触ってみると、サラサラと自分の指の間を通り抜けていった。ミラはまたブラシをジックリと見ていると、あることが思い浮かんだ。