第16章 試される勇気
「ミラ!早く来るんだ!!」
「----もう、遅い」
ミラは入ってきた扉の方に後退りながら、起き上がってくるトロールを見ていた。
「二人は先に行って!」
「無茶よ!こんな大きなトロールを一人だなんて!」
「ミラ!」
ミラは杖を抜いた。
「早く!後で必ず追いつく!」
「でも!」
「ロンの言ったことを忘れるなっ!スネイプに石を取られてもいいのか?」
「…それは…!」
「---ハーマイオニー、ハリーをお願い」
立ち上がったトロールは、自分の足の下から辺りから聞こえる声が気になり覗き込もうと前屈みになった。
「ヴェーディミリアス!」
トロールに向けた杖先から火花とともに緑の閃光がトロールの顔面に直撃した。
「手負のトロールくらい、なんとかしてみせる!」
「駄目だ!君を置いていくなんて!」
「っ…必ずよ!無事でいて!!」
「ハーマイオニー!」
ハーマイオニーはハリーの腕を掴んで引っ張った。ハリーは悲痛な面持ちでミラを見ていたが、フラついているトロールの体が扉の前を遮り、見えなくなった。
ハーマイオニーに引っ張られながらも、ハリーは後ろ髪が引かれる思いで走った。
二人が行ったのを確認すると、ミラはフーッと息をついて、自分を落ち着かせた。二人には必ず追い付くと言った手前、巨大なトロール相手に本当に生き残れるかわからなかった。
トイレで襲われた時も、マクゴナガル先生の言っていたことが思い出した。本当に自分たちはラッキーだったのだと、今になってわかった。
「----あのマントの男と戦う前に、試すにはもってこいの相手かもね」
魔法で攻撃をしてきたミラを、トロールは酷く醜い顔で睨みつけていた。唸り声をあげ、突進をしてきた。もう一度同じ魔法を顔に当て、ミラはサッと左へ素早く移動した。
(ただの呪文じゃ弾かれてこのデカブツには効かない。それに頭を血まみれにするほどの呪文なんて----ぶつけるしかない----あの時みたいに)
考えを巡らせながら、トロールと一定の距離を保ち、背後に回り込んでトロールが持っていたであろう棍棒を探した。