第16章 試される勇気
ロンは気絶しているようで、白のクイーンに引き摺られている間も、ピクリとも動かなかった。ハリーはロンに言われた通り、震えながらも左に三つ進んだ。
「チェックメイト!」
ハリーが叫ぶと、白のキングは王冠を脱いで、ハリーの足元に投げ捨てた。チェス達が左右に分けれて、次の部屋へと続く扉への道を開いてお辞儀をした。
三人は一度ロンを振り返った。
「----行こう、ロンがせっかく作ってくれた時間を無駄にはできない」
「うん---」
ミラは静かに言うと、ハリーは頷いた。そして三人は扉に向かって突進して、次の通路を通った。誰もがロンは大丈夫だと思いながら、気を引き締めた。
「次はなんだと思う?」
「スプラウト先生は済んだわ。『悪魔の罠』だった----『鍵』に魔法をかけたのはフリットウィック先生に違いないし----『チェス』の駒を変身させて命を吹き込んだのはマクゴナガル先生だわ----そうすると、残るはクィレル先生の呪文とスネイプ先生の魔法薬----」
「どっちだったとしても、あんまりいい感じはしなさそうだけど」
次の扉にたどり着くと、ハリーが扉を押し開けた。すると、ムカムカさせるような酷い臭いが鼻をつき、三人は上着を引っ張り上げて鼻を覆った。
「最っ悪の臭いだ---」
顔を最大限に顰めたミラが悪態をついた。
「見て----トロールだ」
ハリーが薄暗い部屋に倒れていたトロールを指さしていた。前に退治したトロールよりはるかに大きく、ハーマイオニーは体を震わせた。よく見るとトロールは頭のコブから血を流しており、気絶していた。
「よかった----今こんなトロールと戦わなくて」
巨大な足をソーッと跨ぎながら、ハリー、次にハーマイオニー。ハリーが次の扉に手をかけて開けた時だった。まだトロールの巨大な足を跨いでいなかったミラが用心深くトロールを見ていると、閉じていた目がいきなり開いたのだった。
「ハリー!ハーマイオニー!走れ!!!」
二人は驚いて振り返ると、トロールが大きな唸り声を上げた。血だらけの頭のコブに手を当て、痛がっている様子だった。