第16章 試される勇気
ロンは三人に振り返ると、「ちょっと考えさせて」と言った。
「ぼく達四人が、ひとつずつ黒い駒の役目をしなくちゃいけない----気を悪くしないで欲しいんだけど、ハリーとハーマイオニーはチェスはあまり上手じゃないし…ミラ。君は…上手になったと思うけど…ぼくに任せて欲しいんだ」
「…仕方がない、そこまで言われたらロンに譲るしかないね」
少し緊張気味にロンはミラに言うと、ミラは大袈裟にやれやれと振る舞ったが、実際チェスの腕はロンの方が上だ。任せて欲しいと言った時、ミラはロンが覚悟を持って言っているのだと気が付いた。
しかし、内心ロンが引き受けてくれて安心もしていた。
「気なんて悪くしないさ、ぼく達は何をしたらいいか言ってくれ」
ハリーが尋ねると、ロンは頷いた。
「それじゃ、ハリー。君はビショップと交替して。ハーマイオニーはその隣りでルークの替わりをするんだ。ミラはクイーンだ」
「ロン、君は?」
「ぼくはナイトになるよ」
チェス達はロンの話を聞いていたのか、黒のナイト、ビショップ、ルーク、クイーンが白に背を向けてチェス盤から降りていった。開いたスペースに、ミラ、ハリー、ロン、ハーマイオニーは位置についた。
「先手は白だから」
ロンがそういうと、向かいの白のポーンが二つ前へ進んできた。ロンが黒駒に指示を送ると、こちらの駒も動き出した。
ミラは横にいるハリーを見ると、顔色が悪そうだった。それもそうだろう、これから取るか取られるか…勝たなければ先には進めない。
「ハリー----斜め右に四つ進んで」
もう後戻りはできない。