第16章 試される勇気
鍵は上下左右、とにかく早く、ミラを振り切ろうと必死に羽ばたいていた。ミラも何度か壁に当たりそうになりながらも、絶対に鍵から視線を外さなかった。
「ハリーほどじゃないけど、チェイサーに向いてるよ」
「そんなこと言ってる場合じゃないわ!壁に当たりそうで怖いわ!」
ロンとハーマイオニーが見守る中、ハリーも鍵を必死で追いかけているミラと鍵に集中していた。そして狙いを定めるようにして、ハリーは真上へ急上昇した。
鍵は真下から急に上がってきたハリーの速さに逃げられず、ハリーは手を高々と上げて鍵を掴んでいた。ミラも突然ハリーが真下からビュンっと飛び出してきて驚きはしたものの、ハリーの手に光る鍵を見てニッとハリーに笑いかけた。
「取った!」
二人は大急ぎで下に降りて箒を乗り捨てると、ハリーは手の中でもがいている鍵をしっかりと握りしめ、鍵穴に突っ込んで回した。
カチャリと、鍵の開く音がすると、鍵はバタバタ暴れてまた空へ向かって飛んでいった。
「開けるよ?」
ハリーがそういうと、三人はコクリと頷いた。
開いたドアの先は真っ暗で、何も見えなかった。
しかし一歩中に入ると、突然光りが部屋中に溢れ、驚くべき光景が目の前に広がっていた。
大きなチェス盤の上に、四人は黒い駒の側に立っていた。チェスの駒は四人よりも背が高く、黒い石のようなもので出来ていた。
そして部屋のずっと向こう側に、こちらを向いて白い駒が立っていた。
「これってつまり…」
「見ての通りだよ、そうだろ?向こうの部屋に行くにはチェスをしなくちゃならないんだよ」
と、ロンが向かい側にある分厚いドアを見て言った。
「どうすれば…」
ハーマイオニーは不安そうに言った。
「多分…ぼくたちがチェスの駒にならなくちゃいけないんだ」
ロンは黒のナイトに近付いて、馬に触れた。すると、石に命が吹き込まれ、馬は蹄で地面を掻き、兜を被ったナイトがロンを見下ろしていた。
「ぼくたち----あの----向こうに行くにはチェスに参加しなくちゃいけませんか?」
ロンの質問に、ナイトは頷いた。