第16章 試される勇気
「鳥じゃないんだ!鍵なんだよ!」
「…本当だ…鍵に羽が生えてる…!」
「ということは…」
まだ鍵の群れを見つめているロンとハーマイオニーを置いて、ハリーは部屋を見回した。ミラもハリーの意図に気が付き、部屋にあるものを探した。
「ハリー!あった、あそこに箒がある!」
ミラは箒に駆け寄ると、二本手に取った。そして一本をハリーに投げ渡すと、ミラは箒に跨った。
「ハリー、行こう!」
「二人はぼくたちが取った鍵を鍵穴にはめてくれ!」
ハリーも箒に跨った。
「こんな何百羽もいる中からどれだっていうんだい!」
ロンは扉の鍵の形を調べながら喚いた。
「ミラ、多分大きくて昔風の鍵だと思うんだ----多分取っ手と同じ銀製だ」
「了解!」
二人は地面を蹴り、飛んでいる鍵の群れの中に潜り込んだ。何百という鍵が二人の周りを漂い、ミラは必死に目を凝らしてハリーが言った鍵を探した。
試しに鍵を捕まえようとすると、魔法がかかった鍵たちは素早く逃げ回り、とてもじゃないが普通の腕前では取れないと気が付いた。
しかしミラは不安になることはなかった。もう一人飛んでいるのは、今世紀最年少のシーカーであり、親友のハリーがいたからだ。ハリーなら絶対に見つけ出してくれると、ミラには確信めいたものがあった。
「あれだ!」
ハリーの叫び声が聞こえ、ミラはハリーが指さした鍵に、体が自然と箒を向けていた。鍵はハリーの言う通り銀製の鍵で大きかった。一度捕まり、無理やり鍵穴に差し込まれたのか、片方の羽が折れていた。
ミラが勢いよく鍵に手を伸ばしたが、鍵は折れている羽とは思えない滑らかな動きでミラの手からひらりと抜け出した。
「見た目より素早い!」
「一緒に追い込もう、ミラ!鍵を追いかけてほしい、その隙にぼくが取ってみる!」
「任せて、シーカー殿!」
ミラはスピードを上げて鍵を追いかけ回した。急上昇した鍵を追いかけていくと、天井にぶつかるスレスレで箒の軌道を変えた。それを見ていたロンとハーマイオニーは、ヒヤヒヤしながらミラとハリーを見守っていた。