第16章 試される勇気
「ハーマイオニー、君が薬草学をちゃんと勉強してくれていて良かったよ」
額の汗を拭いながら、ハリーはハーマイオニーに言った。
「全くだ。やっぱりハーマイオニーがいないと」
ミラは上着についた汚れを払い、まだ悪魔の植物が狙ってこいないか警戒していた。
「焦げてもいいなんて、君の発想はどこからくるんだい?それに君も『薪がないわ!』なんて、まったく」
「絞め殺されるよりマシだよ」
「急ごう、みんな!こっちだ」
ハリーは奥へ続く石造りの一本道を指差した。
通路は下り坂になっていて、足音以外に聴こえるのは、壁を伝い落ちる水滴の微かな音。
「何か聴こえないか?」と、ロンが小声で呟いた。
ミラは耳を澄ますと、前のほうから柔らかく擦れ合う音やチリンチリンという音が聴こえて来た。
「ゴーストかな?」
「わからない---何かの羽の音みたいに聴こえるけど」
「前のほうに光りが見える----何か動いてる」
四人が通路の出口に出ると、目の前には天井は高くアーチ形をしていて、眩く輝く部屋が広がっていた。
宝石のようにキラキラとした無数の小鳥が、部屋いっぱいに飛び廻っているのがわかった。
部屋の向こう側には分厚い木の扉が一つあるだけだった。
「ぼくたちが部屋を横切ったら、鳥が襲って来るのかな?」
「ありえるね…獰猛には見えないけど、こんな数の鳥に襲われたら…」
「ぼくが行くよ!」
「あ、ハリー!」
バッと飛び出していったハリーに、ミラは手を伸ばしたが、その手はハリーに触れることなく空を切った。腕で顔を覆ったハリーが一直線に木の扉まで走っていったが、鳥は襲いかかってくることはなかった。ハリーに続いてミラ達も飛び出し、開かない扉を引っ張ったり押したりしたが、ピクリともせず。ハーマイオニーが「アロホモラの呪文」を使っても、扉は絶対に開かなかった。
「鳥よ…!」と、ハーマイオニーが言い出した。
「この部屋には鳥しかいないわ。きっと何か手がかりがあるはずよ」
ミラ達は上にいる鳥達を見上げると、鳥達がキラキラと輝いていることに気が付いた。