第16章 試される勇気
ハリーからの合図で、ミラも仕掛け扉に飛び込んだ。音が無くなったせいで、フラッフィーが大きく吠える声が聞こえたが、下に落ちていくほど声は小さくなっていく。
ドスンと、ミラは何や奇妙で柔らかいものの上に落ちた。
「みんな、無事?」
「うん。この植物のおかげでラッキーだったよ」
みんなの安全を確認すると、ロンはなんてことないと言った。
「ラッキーですって!二人とも、よく自分を見てみなさいよ!」
ハーマイオニーが悲鳴を上げて素早く立ち上がった。湿った壁の方へ行こうともがいていた。なんとか着地したハーマイオニーの足首に、植物の蔓が巻きつこうとしたのを、ミラはその蔓を掴んだ。
「ミラ、あなた…っ!」
「ハーマイオニー、何か解決策を!」
ミラの体には既にいくつかの蔓が巻き付き、もう立ち上がる事さえできなかった。
「動かないで!三人共よ!!わたし知ってる---これ、悪魔の罠だわ!」
「ああ、なんて名前か知ってるなんて、大いに助かるよ!」
ロンが首に巻き付こうとするツルから逃れようとして、のけぞりながら唸った。
「黙ってて。どうやってやっつけるか思い出そうとしてるんだから!」
ハーマイオニーが「悪魔の罠、悪魔の罠----スプラウト先生はなんて言ってたっけ----暗闇と湿気を好み…」と、頭を悩ませながら必死に思い出そうとしていた。ミラはハーマイオニーに言われた通り動かないようジッとしていたが、それでも蔓は確実に、ゆっくりとミラを締め付けようとしていた。
ハリーの方を見ると、ハリーの胸に巻き付いた蔓と格闘して喘いでいた。
「ハーマイオニー!ちょっと焦げてもいいから燃やすんだ!」
既に蔓が両腕に巻きついて、杖も出せなくなったミラは叫んだ。
「それよ!ミラ!でも、薪がないわ!」
「何を言ってるんだ!それでも君は魔女か!?」
ロンが大声をあげると、ハーマイオニーはハッと気が付いたように杖を取り出した。以前スネイプ先生に仕掛けた青色の炎が植物めがけて噴射した。光と熱ですくみあがった蔓が、ミラたちを締め付ける力が弱まり、三人は振り解いて自由の身になった。