第16章 試される勇気
「何にも----真っ暗だ---降りて行く階段も無い。落ちて行くしかない」
仕掛け扉を覗き込んだロンが言った。ミラもロンの後ろから覗き込んだが、ロンの言った通り、仕掛け扉は真っ直ぐな穴で、光が一切見えなかった。
「先に行くかい、ハーマイオニー?」
「まぁ!」
ロンがハーマイオニーに尋ねると、ハーマイオニーは信じられないとロンを睨み付けた。「冗談だよ」と、ロンはすぐに言った。
横笛を吹いていたハリーが、ロンに手で合図して、自分自身が行くと指さした。横笛をハーマイオニーに渡して、ハリーは仕掛け扉に近付いた。一瞬音が途切れた瞬間に、フラッフィーの唸り声が聞こえたが、ハーマイオニーが吹き始めるとまた静かになった。
「わたしが先に行くよ、ハリー。何かあったら---」
「ううん、ぼくに行かせて」
底の見えない穴に、ハリーは腰掛けた。
「ぼくが言い出したことなんだ、ぼくが行く」
ミラは心配の眼差しでハリーを見ると、ハリーは力強くミラを見つめ返した。
「もしぼくの身に何か起きたら、追い掛けて来ないで。真っ直ぐにふくろう小屋に行って、ダンブルドア宛にヘドウィグを送るんだ。いいかい?」
「…うん、ロンとハーマイオニーが行ってくれるよ」
「君もだ」
力強いエメラルドの瞳を見ていると、断れなくなりそうでミラは顔を逸らした。
「ロン、ミラを引きずってでもお願い」
「わかった」
「それじゃ、後で会おう。できればね…」
ハリーは意を決したように穴の中へ入っていった。
「オーケーだよ!」と、ハリーの声が聞こえてくるまで、ミラは他の誰よりも不安を感じていたが、ハリーの声が聞こえるとホッと一息ついた。
次に飛び降りたのはロンだった。ミラも飛び込もうと仕掛け扉に近付いた。飛び込もうと思った瞬間、一度ハーマイオニーを見た。必死に横笛を吹いているが、少し顔色がよくない気がして、ミラは飛び込むのをやめた。
そしてハーマイオニーに「貸して」と、横笛を渡すように手を出した。最初は大丈夫だと、ハーマイオニーは顔を横に振った。
「ほら、早く」
ミラは器用にハーマイオニーから横笛をスルリと抜き取ると、横笛を吹き始めた。ハーマイオニーは「ありがとう」と、小さな声でお礼を言った。