第16章 試される勇気
「ネビル、こうしなくちゃいけなかったんだ…理由を話してる時間がないんだ」
ハリーは申し訳なさそうにネビルを見下ろして言った。
「あとできっとわかるよ、ネビル」
ロンもそう言って、ソファーに駆けてあった膝掛けをネビルの体にかけてやった。四人はネビルを置いて、マントを被って談話室から出た。
・・・・・
四階の廊下に着くまで、四人はヒヤヒヤしながらもなんとかたどり着いた。運良くフィルチにも会わず、ミセス・ノリスも警戒はされつつも結局は後を追ってこなかった。途中ピーブスに出くわすも、ハリーの血みどろ男爵の声真似で難なくこれたのだった。
「ほら、やっぱり。スネイプはもうフラッフィーを突破したに違いない」
四階の廊下にある扉は、すでに少し空いていた。それを見つけたハリーが声を落として言った。
四人は開いたままに扉を見ると、改めて自分たちかがこれから何をするのか思い知らされた。透明マントの中で、ハリーが振り返った。
「戻りたかったら、これが最後のチャンスだ。戻ってもぼくは誰も恨まない。マントを使って戻ってもいい。ぼくにはもう必要ないからね」
「バカ言うなよ」
「一緒に行くわ」
ロンとハーマイオニーが答えると、まだ答えていないミラに三人の視線が集まった。
「ほら、行こう」
ミラは先頭のハリーの背中を押して即足した。
扉を押し開けると、低い、グルグルという唸り声が聞こえてきた。三つ頭の犬、フラッフィーは姿の見えない四人のいる方向を狂ったように匂いを嗅ぎ回っていた。
フラッフィーの足元にはハープが落ちていた。それはスネイプがすでに使用したのだと四人は気付いた。ハリーがどこからか横笛を出し吹き始めた。メロディーとも言えないものだったが、吹き続けているとフラッフィーのトロンとし始めた。
フラッフィーが完全に眠りこけてしまうと、四人はマントから抜け出した。ハリーが笛を吹き続けている間に、ミラとロンは仕掛け扉に近付いた。
「扉は引っ張れば開きそうだな」
「一緒に引っ張ろう」
二人は仕掛け扉に引き手の輪に手をかけると、扉が跳ね上がった。
「何か見える?」
ハーマイオニーが恐々と尋ねた。