第15章 別れの言葉
あの罰則の夜以降、ハリーの額にある稲妻のような傷跡が痛むことが増え、ミラはあの夜に出会った黒いマントを被った人物のせいではないかと疑っていた。
地面に蹲って痛みに耐えるハリーに襲い掛かろうとしたあの黒いマントの人物を思い出して、ミラはゾクっとした。できればもう二度と会いたくないと思った。
「ずっと傷が疼くんだ----今までも時々こういうことはあったけど、こんなに続いたことははじめてだ」
「マダム・ポンフリーのところに行ったほうがいいわ」
と、ハーマイオニーが言った。
「ぼくは病気じゃない…きっと警告なんだ----何か危険が迫っている証拠なんだ----」
「ハリー、リラックスしろよ。ハーマイオニーの言うとおりだ。ダンブルドアが居る限り、石は無事だよ。スネイプがフラッフィーを突破する方法を見つけたっていう証拠は無いし。一度脚を咬み切られそうになったんだから、スネイプがすぐにまた同じことをやるわけないよ」
暑くてだらけているロンが、寝転がりながら言った。
「それに、ハグリッドがダンブルドアを裏切るなんて有り得ない。そんなことが起こるくらいなら、ネビルはとっくにクィディッチ世界選手権のイングランド代表選手になってるよ」
ハリーは頷いた。
「でも何か大事なことを忘れているような気がするんだ…何か、重大なことを…」
眩しいほどの青空に、ふくろうが手紙を咥えて学校のほうに飛んで行く姿が見えた。ミラは上体を起こし、飛んでいくフクロウの中に、ノクチュアがいないか見つめた。
すると、一羽の梟が真っ直ぐこっちに向かってきた。
「ノクチュア!」
ミラは立ち上がって、ノクチュアが止まれるように腕を構えた。ノクチュアは湖の水面を流れるように飛び、一度フワリと舞い上がると、ミラの腕に綺麗に着地した。
ノクチュアの足には手紙が括り付けられており、ミラは「よくやった」と、ノクチュアの頭を撫で上げ、褒め続けた。初めての仕事を無事完遂させたノクチュアは、ミラが大変喜んで褒めるので、嬉しそうな声を漏らした。