第15章 別れの言葉
スネイプ先生の試験は、『忘れ薬』を作る実技だった。
みんなが『忘れ薬』の作り方を思い出そうと必死になって緊張している時に、生徒たちのすぐ後ろに廻り込んで、監視しているスネイプ先生に、生徒達は余計に緊張した。しかし、マクゴナガル先生で上手くいったミラには気にもならなかった。
鼻歌でも歌い出しそうなミラの機嫌の良さに、隣で作業をしていたロンが、ミラは気が触れたのかと思っていた。
最後の試験は魔法史だった。ゴーストのビンズ先生が、「羽ペンを置いて、答案羊皮紙を巻きなさい」と言った時には、ハリーが他の生徒たちと歓声を上げているのを、ミラはこっそり見て小さく笑っていた。
「思ってたよりずーっとやさしかったわ」と、太陽の光りが燦々と降り注ぐ校庭に、繰り出した生徒の群れに加わって、ハーマイオニーが言った。
「来年はもう少し手を抜いてもいいかもね」
「それ、ぼくも賛成だ」
ミラは悪戯っぽく笑って言うと、ロンが誰よりも早く答えた。それを聞いたハーマイオニーがミラとロンに何かを言う前に、二人は湖まで走って逃げた。
「もう!どうしてあの二人はこう言う時にすごく仲がいいのかしら」
逃げそびれたハリーが、ハーマイオニーがプリプリ怒っているのを苦笑いしていると、振り返ったハーマイオニーの顔を見て、ハリーはギクリとした。
「もちろん、ハリーは来年の試験勉強も頑張るわよね?」
「--ああ、もちろんさ!再来年もね!」
ぎこちない笑顔で答えたハリーに、ハーマイオニーは疑惑の目を向けられ、「ぼく達も行こう!」と、慌てて湖に駆け出した。
湖の近くにあった木陰に、四人はゴロリと寝転んだ。湖には双子のウィーズリー兄弟とリー・ジョーダンが、暖かな浅瀬で日向ぼっこをしている大イカの足をくすぐっていた。
「もう復習しなくてもいいんだ」と、ロンが草の上に大の字になりながら嬉しそうに息を吐いた。
「ハリー、もっと嬉しそうな顔をしろよ 試験でどんなにしくじったって、結果が出るまでまだ一週間もあるんだ。今からあれこれ考えたって仕様がないだろ」
ハリーは額をさすっていて、ミラは心配そうにハリーを見た。
「いったい、これがどういうことなのかはっきりすればいいのに」
「まだ痛むのか?」