第14章 禁じられた森
フィレンツェと名乗ったケンタウロスは、プラチナブロンドの髪に、胴体は黄褐色、そして淡いサファイアの色をした青色の目を持っていた。
森がハリーにとって安全でないと教えてくれると、フィレンツェはハリーとミラを背に乗せて駆け出した。その途中、ユニコーンの血が何に使われるのか教えてくれた。
ミラはハリーの後ろにしがみつきながら、ぼんやりと話を聞いていた。
「ユニコーンの血は、たとえ死の淵に居る者でもその命を長らえさせてくれる。でも恐ろしい代償を払わなければならない。自らの命を救うために、純粋で無防備な生物を殺害するのだから、得られる命は完全な命ではない。その血が唇に触れた瞬間から、その者は呪われた命を生きることになる、生きながらの死の命なのです」
「永遠に呪われるくらいなら、死んだ方がマシだと思うよ…そうでしょ?」
「そのとおり」と、フィレンツェは言った。
「しかし、他の何かを飲むまでのあいだだけ生き長らえれば良いのだとしたら----完全な力と強さを取り戻してくれる何か----決して死ぬことが無くなる何か。ミスター・ポッター、いまこの瞬間に、学校に何が隠されているか知っていますか?」
ハッとハリーとミラは確信した。
「賢者の石!『命の水』だ!----だけど、いったい誰が----」
「力を取り戻すために長いあいだ待っていた者が誰か、思い浮かばないですか?命にしがみついて、機会を伺って来たのは誰か?」
「それじゃ…今夜ぼくが会ったのは…」
ハリーの声は震えていた。
「ヴォル----」
「ハリー!ミラ!二人とも大丈夫?」
ハリーが何かの名前を言おうとした時、息を弾ませながら走ってきたハーマイオニーの声にかき消された。その後ろからはハグリッドと、ドラコとファングの姿も見えた。
「ぼくは大丈夫だよ…ミラは」
「わたしも平気、ちょっと疲れただけ…」
ハリーとミラはどう答えていいか分からなかったが、心配しているハーマイオニーを安心させようと薄らと広角を上げた。
フィレンツェの背中から降りると、フィレンツェはハグリッドにユニコーンの死体がある場所を指さした。