第14章 禁じられた森
自分が何の呪文を叫んでいるのか、ミラ自身わからなかった。襲われそうになっているハリーを見た時、血の気が一瞬にして引いたと同時に、怒りが自分の中で沸いた。
杖から赤い光が漏れると、フードを深く被った者に向けて放った。バシッと一振りされただけで、ミラの呪文は何事も起こることなく、あっけなく消えた。
臆さず杖を振り続けながら、うずくまっているハリーに声をかけた。
「起きろハリー!立ち上がれ!!」
「頭が…額が痛いんだ!!!」
額を押さえているハリーは、動くことさえもままならない様だった。
フードの相手には、自分の魔法が一切効かない。ハリーは原因不明の痛みで動けそうにない----殺されてしまうんだろうか、ここで?ハリーと?
一瞬頭にその考えが過ぎった。
と、その時、こちらに早足で掛けてくる蹄の音が聞こえた。
それはハリーの真上をヒラリと飛び越えると、フードを被った者の前に立ちはだかった。フードを被った者は驚いたのか、素早く暗い森の中へ姿を消した。
「はぁ…はぁ…」
助かったのだろうか?----ミラはしばらく震えて動けなかった。ハリーの真上を飛んだのは、ハーマイオニーから話に聞いていたケンタウロスだった。
「は、ハリー…!」
声も震えていた。今にも力が抜けてしまいそうになる体に鞭を打って、ハリーに駆け寄った。上体を起こしたハリーに飛びつくと、力一杯その体を抱きしめた。
「よかったハリー!生きてるんだな!!」
「どうして、ミラ…こんな危険なこと」
「殺されそうになってたハリーに言われたくない!ハリーが死んだら、わたしはどうしたらいい?あんな、あんな孤児院一人で戻りたくないよっ!」
「…ミラ」
ミラの悲痛な声が、ハリーの胸をキリキリ締め付けた。
ハリーは顔を上げると、自分を助けてくれたケンタウロスと目が合った。先に出会ったケンタウロスとは違うことに気が付いた。
「怪我は無いかい?」
手を差し伸べてくれたケンタウロスに、ハリーはその手を掴むと、力強く引っ張られて、ハリーに飛びついていたミラも一緒に立ち上がらされた。