第14章 禁じられた森
「別にお前なんか来なくても良かったんだぞ、ポッター」
「ぼくは君が怖気付いて、ミラを放っておいて逃げないか心配でついて来たんだ」
どちらが最初に始めたかもうミラには思い出せなかった。
自分を挟んでハリーとドラコが言い合いするのを止めもしなかったが、歩く先のユニコーンの血に集中して歩いていた。
「ハグリッドが言ってた、この森に今、居るべき者じゃないものがいるって…狼男じゃないって」
狼男ではない何かがこの森にいる…ドラコは、ハリーの発言に口を閉じた。ミラはドラコを見ると、元々青白い顔が、少し濃くなったように見えた。
「その居るべき者じゃないものに出会わないことを祈るよ」
ミラは点々と続いているユニコーンの血がさっきより多くなっているような気がしながらも、どんな音も逃すまいと耳に神経を研ぎ澄ませていた。
奥へ進んでいくと、血の滴り具合も濃いように思えた。飛び散った血が木の根元にあるのを見つけた。何かが苦しんでのたうちまわったかのような跡があり、ミラは唾を飲み込んだ。
ハリーもドラコも何も言わなかった。どう見てもユニコーンが数十分前か、あるいは数分前にいたと気付いているからだ。
樹齢何千年の樫の古木の枝が絡み合うその向こう側に、開けた平地が見えた。
「見て----」
ハリーがミラとドラコに腕を伸ばして制止しながら呟いた。地面に光純白の光に、三人は恐る恐る近寄ると、それはユニコーンの死体だった。
「なんて、酷い…」
口元に手を押さえて、ミラは地面に倒れているユニコーンの死体を見て言葉を溢した。こんなに美しくて、こんなに悲しい生物は見たことがないと、ハリーとミラは思った。ハリー一人がユニコーンに近付いていくと、動かないドラコを見た。彼の顔はますます白くなったような気がした。
「…ユニコーンは見つけた、早くハグリッドに知らせて帰ろう」
ミラは空いていた左手で、ドラコの右手に触れた。冷たくて、このままでは凍ってしまうんじゃないかとミラは思った。
すると、背後で這うような滑る音が聞こえた。ドラコの顔を見ると、彼は金縛りにあったかのように立ち尽くしていた。