第14章 禁じられた森
「----貸せ、ぼくが持つ」
ドラコが急にミラの隣に来ると、引ったくるようにランプを取り上げた。
「何、いきなり」
「お前が持つより、ぼくが持った方がいいと思っただけだ」
「御坊ちゃまには少々重すぎると思うんだけど」
「これくらい持てる!」
ムッとしたドラコの顔が、照らされたランプで見えて、ミラはクスクス笑った。
「負けず嫌い」
「男勝りなお前に言われたくない」
「今頃女の子扱い?いいよ別に、そんなの」
「お前のこと、女だなんて思ったことない」
「じゃあランプ返して」
「嫌だ」
ミラがランプに手を伸ばすと、ドラコはスッと遠くへ遠ざけた。不満そうにドラコを見ると、ドラコはフフンと笑っていた。
「せいぜいぼくをしっかり守るんだな、お前が言い出したんだぞ」
確かにハグリッドには、何かあれば自分が守ると言ったが、けしてドラコがふんぞりかえって言うセリフではないと思った。しかしそれがドラコらしくて、ミラは「仕方ないな」と、言ってランプを取るのをやめた。ここは大人しく、ドラコに従ってやるかと、杖を利き手に持ち替えた。
「----かみ」
「え?」
急にドラコが何か喋り出し、ミラは隣にいるドラコを見て首をかしげた。
「…お前の髪…」
ドラコが止まると、ミラもその場に止まってドラコを見つめた。ドラコは何か言いたいのか、口を開けると、閉じたりを繰り返した。----何を言いたいのだろう----かみ、お前のかみ----髪----。ミラは無意識に後頭部の髪を触った。
「----あぁ、髪のこと?」
「…」
「フレッドとジョージが整えてくれたんだ、前髪は勝手に切られたけど…」
「…」
「何?気にしてくれてたの?」
ミラは口に手を抑えてニヤニヤ笑ってドラコを見ると、ドラコは眉間に皺を寄せてミラを睨み付けた。
「!」
ミラはすぐに笑うのをやめた。まさかドラコが本当に自分の髪を気にしていたと気付き、目を大きく開けてドラコを見てしまった。
「----悪かった」
ミラは耳を疑った。あのドラコ・マルフォイが、初めて謝罪の言葉を口にしたのだ。