第14章 禁じられた森
ハグリッドは苦しんでいるユニコーンを想像したのか、心苦しそうに銀色の血を見ていた。
「じゃあぼくはファングと一緒がいい」
ファングの長い牙を見たドラコが急いで言った。
「構わんが、言っておくがそいつは臆病だぞ」
ドラコが信じられないと言った顔を見たミラは、思わずフフっと声を抑えて笑ってしまった。その笑い声に気が付いたドラコが、ミラを素早く睨み付けた。
「そんじゃ、ハリーとハーマイオニーは俺と行こう。ミラ、お前さんはドラコとファングと別の道だ」
「任せて、ハグリッド。いざとなったらわたしが彼らを守ってあげるから」
ニヤっとハグリッドに笑ってみせると、ハグリッドは「頼もしいが、くれぐれも無茶はせんようにな」と、ミラに言い聞かせた。
ユニコーンを見つければ緑色の光、もし困ったことがあれば赤色の光を打ち上げる練習をすると、それぞれの道を進んだ。別れ道の際、ハリーとハーマイオニーが心配そうにミラを見ていたが、ミラは笑顔で手を振ると、ランプを持って前へ進んだ。
森は不気味なくらい静かだった。自分たちが歩く音だけがやたら大きく聞こえて、ミラは空いている手に持っている杖をしっかりと握り直した。
「----こんなくだらないこと、やってられないな」
静かに自分の後を着いてきたドラコが、ようやく口を開いた。ミラは立ち止まり、後ろを振り返った。
「父上が知ったらなんとおっしゃるか----子供をこんな危険な場所に送り込むなんて、どうかしている」
「…でも、規則を破ったアンタにまず問題があるんじゃない?アンタの”父上”がどう思うか、今度手紙で聞いてみたら?」
くだらないのはどっちだと、切り捨てるようにミラは前へ歩き出した。それに慌ててドラコもミラの後に続いた。
「お前の所はどうなんだ?こんなこと、子供にさせて…いるんだろう、孤児院にもお前の世話とか、心配してくれるやつが」
「いないよ」
またしてもミラは歩みを止めた。しかし、今度は振り返ることはなかった。
「あんな所に、わたしを心配してくれる人なんて一人もいない。いるはずないよ」
そしてまた歩き出した。ドラコもそれに続いたが、もうその話題には触れようとは思わなかった。