第14章 禁じられた森
「ぼくは行かないからな」
ドラコがハグリッドにいった。声が恐怖に怯えていることに気が付いたハリーとミラは、いい気味だと思った。
「ホグワーツに残りたいなら、行かなくちゃならん。悪いことをしたんだから、その償いをせにゃならん」
ハグリッドは厳しくドラコに言った。
「でも、『森』に行くのは召使いがすることだ。生徒にさせることじゃない----同じ文章を何百回も書き取りするとか、そういう罰だと思ってたんだ。もし、ぼくがこんなことをするって父上が知ったら、きっと----」
「----きっと、これがホグワーツの流儀だってそう言い聞かせるだろうよ。書取りだって?そんなもの---それがなんの役に立つ?役に立つことをしろ、そうでなけりゃ、退学しろ。お前の親父さんが、お前が追い出された方がましだって言うんなら、さっさと城に戻って荷物をまとめろ。さあ行け!」
珍しく厳しいことを言うハグリッドが唸るようにドラコに言うと、ドラコはそれ以上話すことはなかった。ただジッとハグリッドを睨み付けていたが、しばらくすると、視線を下に落とした。
「よーし、それじゃ----よーく聞いてくれ。なんせ、俺達が今夜やろうとしていることは危険なことだ。みんな軽はずみなことをしちゃいかん。しばらくは俺について来てくれ」
ハグリッドを先頭に、『森』のいちばん外側のところへとやって来た。ランプを高く掲げ、ハグリッドは暗く生い茂った樹木の奥へと消えて行く細くて曲がりくねった獣道を指差した。『森』の中を覗き込むと、一陣の風がみんなの髪の毛を逆立てた。
「あそこを見ろ、地面に光った物が見えるか?銀色の物が見えるか?ユニコーンの血だ。何者かにひどく傷付けられたユニコーンがこの森の中に居る。今週になって二回目だ。水曜日に最初の死骸を見つけた。皆んなで、可哀相なやつを見付け出すんだ。助からないなら、苦しまないようにしてやらなければならん」
「ユニコーンを襲ったやつが先にぼく達を見付けたらどうするんだ?」
と、ドラコは恐怖を隠しきれない声でハグリッドに尋ねた。
「俺やファングと一緒に居れば、この『森』に住むものは誰もお前達を傷付けはせん----道を外れるなよ----よーし、二組に分かれて別々の道を行こう。そこらじゅう血だらけだ。ユニコーンは少なくとも昨日の夜から苦しみもがいちょるはずだ」