第14章 禁じられた森
「昔のような体罰が無くなって、本当に残念だ----手首を括って天井から数日吊るしたもんだ。今でも私の事務所には鎖が取ってあるがね----万一必要になった時に備えて磨いてあるよ」
フィルチの嬉しそうな昔の罰則のお喋りに、ミラは目を細めた。本当のことを言っていたとしても、これから罰則を受けるみんなをもっと怖がらせる為に言っているのだ。
真っ暗な校庭を、一行は静かに横切った。しばらく歩くと、真っ暗だったおかげでどこに向かっているのか検討が付かなかったが、ハグリッドの小屋がチラリと見えると、ハリーとミラは顔を合わせて口角を上げた。
ハグリッドと一緒なら、そんなに悪ことじゃないと、二人は思った。二人の顔を見たフィルチは、二人が何を考えているか見破ったように口を開いた。
「あの木偶の坊と一緒に楽しもうと思っているんだろうねえ?もう一度よく考えたほうがいいねえ----お前達がこれから行く先は、『森』の中だ。もし全員無傷で戻って来ることが出来たら、私の見込み違いになるがね」
「『森』だって?」
一番後ろを歩いていたドラコの足がピタリと止まった。その声はいつもの冷静さを失っているようだった。
「そんなところに夜には行けないよ----それこそいろんなのが居るんだろう----狼男(ワーウルフ)とか、そう聞いてる…」
「そんなことは今さら言っても仕方がないねえ」
フィルチの声は、嬉しさのあまり上わずっていた。
「狼男のことは、問題を起こす前に考えておくべきだったねえ?」
「もう時間だ」
大きなクロスボウを抱えたハグリッドが、ファングをつれてやってきた。
「お前の役目はもう終わりだ。ここからは俺が引き受ける」
静かにハグリッドがフィルチに言うと、「夜明けに戻って来るよ」と、言った。
「こいつらの身体の残ってる部分だけ引き取りに来るよ」
嫌味たっぷりに言うと、ランプが暗い闇の中にユラユラと白に向かって消えていった。
「狼男の体の一部を取って送ってやろうか」
ミラは既に遠くへ行ってしまったフィルチに向かって吐き捨てるように言うと、ハリー、ハーマイオニー、そしてドラコが青褪めた顔でミラを見ていた。