第13章 ノルウェー・ドラゴンのノーバート
とうとうノーバートとの別れがやってきた。いつもより早く起きたミラは、まだ眠っているハーマイオニー達を起こさないよう、静かに着替えて部屋を出た。談話室にはいつもより人影は少なく、ミラはハリー達を待たずに談話室を出た。
静かな朝だった。
ハグリッドの小屋までは、誰にもすれ違うことなく来れた。小屋の前まで来ると、ミラはドアをノックした。中から大きな足音が近付いてくると、「誰だ」と、ハグリッドの声がした。
「わたしだよ、ハグリッド」
「ミラか?」
小屋のドアが開くと、ハグリッドが顔を覗かせてミラを確認した。
「おはよう…ちょっと早起きしちゃって」
「そうか…まぁ、入れや」
「うん」
ハグリッドの小屋に入ると、相変わらず鶏の羽やブランデーの空き瓶があちこちに散らかっていた。
「グルルルルルル----」
どこからか、ノーバートの唸り声が聞こえた。ミラは声のする方を探していると、オレンジ色の目とバッチリ目が合ってしまった。
「ノーバート!おいで!」
ミラは腕を広げて見せると、隠れていたノーバートはミラに飛びついた。1年生のミラの体では、すっかり大きくなったノーバートを抱えるのはすでに大変なことだった。
それでもこうして抱きしめられるのは、今日が最後なのだ。今日の深夜には、チャーリーの友達がノーバートを運び出す手筈になっている。
ノーバートを抱きしめていると、元々体温が高いおかげで、触れ合っている所から暖かくなってくる。離したくないなぁ---と、ミラは思った。
「ずっと、ここにいてくれたらいいのに」
「そう思ってくれるのはお前さんだけだ、ミラ…こんなに小さくて可愛いのに…」
ハグリッドは涙目だった。しょんぼりしているハグリッドから目を離すと、ミラはできる限りノーバートに笑いかけた。
そしてノーバートがいつも食べている朝食を取りに、小屋の物置に向かった。