第13章 ノルウェー・ドラゴンのノーバート
すっかりハーマイオニーの横で傍観していたミラだが、後ろを振り返ると、ハリーが引き攣った顔でハーマイオニー達を見ていた。あたりを見回すと、どの男子生徒もハリーと似たような顔をしていた。
どうやら男子達は、女の喧嘩に割り込む勇気がないらしい。
ある視線に気が付き、顔を上げると、薄いグレーの瞳と目が合った。ドラコだった。ドラコはミラと目が合うと、気まずいのかすぐに顔を逸らしてしまった。
ノーバートとの別れが明日に迫る中、ミラは睨み合っているハーマイオニーとパンジーの間に体を割り込ませた。明日の計画を、こんなことで無駄にしたくなかったからだ。
「行こう、ハーマイオニー。別に気にしてない」
「でも…」
「髪なんて時間が経てば戻るさ。でもわたしはハーマイオニーの髪が好きだから、できれば切ってほしくないな」
ミラはハーマイオニーの髪を一房、優しく手で持ち上げると、普段よく見え隠れしていたアメジストの瞳が愛おしげに髪を見つめているのが見えた。ハーマイオニーは一瞬息が止まりそうだった。
「さぁ、行こう」と、ミラは空いているハーマイオニーの手を掴んで教室から出て行った。二人が完全に出て行った後、誰かがポツリとつぶやいた。
「あいつ、本当に男じゃなくてよかったな」
誰も声を発さなかったが、男子達は内心「本当にそうだ」と思った。