第13章 ノルウェー・ドラゴンのノーバート
今度は談話室の椅子に座らされると、ジョージがどこからか鏡を持って、座っているミラの前にたった。椅子の後ろには、これまたどこから持って来たのか、大きな布と鋏を持ったフレッドが立っている。
「いい予感がしない」
ミラはダラダラと冷や汗をかきながら、鏡に映るフレッドを見た。フレッドは座っているミラの首に、大きな布を巻きつけると、すっぽりと体が布に隠れてしまった。
「大丈夫さ、ミラ。フレッドは器用なんだぜ」
「ああ、そうとも。いつも兄弟の髪を切っているから安心してくれ」
「いや、そっちの心配じゃなくて…」
「はーい、真っ直ぐ鏡見て」
やっぱり双子に髪を任せるのはどうかと、ミラは後ろにいるフレッドを見ようと首を後ろに回してみたが、フレッドにたやすく真っ直ぐ向くように顔を元に位置に戻された。
ジョキン、ジョキンと、すでに切り始めているフレッドを、もう止めることはできないのだとミラは諦めた。散々ドラコが女の髪を切って喜ぶ変態だと罵った後、ミラの髪を整えてやろうと双子が言い出したのがきっかけだった。
最初はミラも断ったが、事情を知るのは今ここにいる四人だけだったので、渋々受けることにした。ハサミの切る音が、どこか心地よくて、ミラは疲れもあって、ウトウトし始めた。
眠ったらだめだ----双子にどんな髪型にされるか----。
「お嬢様、できましたよ」
肩を叩かれて、ミラはハッと目が覚めた。目を瞑っていただけと思っていたら、完全に眠ってしまったようだった。ミラは慌てて、前の鏡を見ると、いつも不揃いで長かった前髪が、かなり短く、はっきりと自分の目と目が合った。
「ま、前髪が…」
ミラは恐る恐る前髪を触った。
すると、後ろにいたフレッドがミラの両肩を掴んで、鏡に映り込んできた。
「やっぱりこっちの方がいい、そう思うだろジョージ?」
「ちょっと切すぎじゃないか?」
「後ろが思ったより短かったんだ」
「くしゃくしゃにしたら、ハリーみたいじゃないか?」
「俺たちと同じ双子の完成だ!」
二人はハイタッチして楽しげにグルグルとミラの椅子の周りを踊り回った。