第13章 ノルウェー・ドラゴンのノーバート
男子トイレでハンカチの交換をしたところ、傷口が気持ち悪い緑色になっていたそうだ。どうやらノーバートの牙には毒があったらしい。ロンは昼からの授業は全て欠席し、三人はロンの心配をしつつも、午後の授業に取り組んだ。
午後の授業が全部終わると、三人は急いで医務室に向かった。
途中、医務室のある方角からドラコの姿を見かけた。こちらをせせら笑って見ており、ミラは眉間に皺を寄せるだけで、すぐに顔を逸らした。
ロンの状態は思っていたより悪く、医務室のベッドに横になっていた。
「手だけじゃないんだ」と、ロンが声をひそめて言った。
「もちろん手のほうもちぎれるように痛いけど。マルフォイが来たんだ」
「マルフォイが?」
「あいつ、ぼくの本を借りたいってマダム・ポンフリーに言って入って来やがった。ぼくのことを笑いに来たんだよ。何に噛まれたか本当のことをマダム・ポンフリーに言い付けるってぼくを脅すんだ----ぼくは、犬に咬まれたって言ったんだけど、多分マダム・ポンフリーは信じていないと思う---- クィディッチの試合の時、殴ったりしなければ良かった。だから仕返しにぼくにこんな仕打ちをするんだ」
「あいつは殴られて当然のことを言ったんだ、君は悪くないよ」
「そうだよ、ロン。わたし、マルフォイのあの青あざ見て、スカッとしたよ」
ハリーとミラはロンを励まそうとした。
「土曜日の真夜中で、すべて終わるわよ」
と、言ったハーマイオニーの慰めの言葉を聞いた瞬間、ロンは落ち着くどころか、酷い汗をかきはじめた。顔はさっきよりも真っ青で、すぐにその異変に三人は気が付いた。
「どうしよう…大変だ…今思い出した……チャーリーの手紙をあの本に挟んだままだった----ぼく達がノーバートのことを運び出すことをマルフォイに知られてしまう」
ミラはすぐに医務室に来る前に、すれ違ったドラコの顔を思い出した。
「わたしが取り返し行く!」
ミラはハリーとハーマイオニーの制止の声も聞かずに医務室から飛び出していった。今ならまだ間に合うかもしれないと、ドラコが歩いていった方角の廊下を、できる限りの速さで走った。