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涼風の残響【鬼滅の刃】

第4章 お稽古と呼吸の技


風音の予想通り、扉から顔を覗かせたのは今日も溌剌とした笑顔をたたえている杏寿郎だった。
しかし先ほど聞こえた言葉により溌剌とした笑顔は少し強ばっているように見える。

「こんにちは、杏寿郎さん。怪我をしてしまったなら私のお薬つかってみますか?胡蝶さんは恐らく不在だと思いますので」

扉の前までやって来た風音に中へと導かれた杏寿郎は部屋の中へと入り、まずは怪我人である風音をベッドの上に座らせた。

「俺は君の見舞いに来ただけなので薬は必要ないぞ!今日は任務は入ってなくてな、暗くなり始めてからの警備のみだ!そろそろ日が暮れるので帰ろうとしていたら、君のとんでもない言葉を拾ってしまった次第だ」

はっきりと一言一句漏れずに聞こえてしまったようだ。
いつもはキリッと上がった眉は心配げに僅かに下がり、風音の罪悪感をこっそり刺激した。

「お見舞いに来て下さってありがとうございます。たぶん実弥さんも既に知ってることだと思うんですが……私の血、鬼が嫌う匂いがするみたいで。鬼が嫌うなら何かに役立てられないかと考えた結果、何だか気持ち悪いので考え直していたところです」

自分自身でも自分の血の入った軟膏など抵抗があるのだ……実弥やしのぶ、目の前にいる杏寿郎も鬼に対して有効と言えど使いたくないだろう。

「鬼が嫌う血などあるのだな。だが考え直す以前に自分の体を傷付けてはいけない。不死川でなくとも、そんなことをすれば柱全員から叱られてしまうぞ?今耳にしたことは聞かなかったことにする、決して試すようなことはしないように」

いつもと違う杏寿郎の静かな声音に抗うなどという気持ちは全く湧かず、風音は素直に頷いて試さないと示した。

「うむ!それでいい!君の元気な顔を見られたので俺はお暇させてもらうぞ!不死川は日が変わる前には戻ると言っていたので、風音はもう少し休んでいなさい。いいな?」

「はい。わざわざお見舞い、ありがとうございます。警備、どうかお気を付けて……あ、良ければ先を見せていただいても……やめておきます。すみません、お気を付けて!」

笑顔の中に窘める色が浮かんだ杏寿郎に慌てて謝罪して見送ると、いつもの優しい笑顔で頷き杏寿郎は部屋を後にした。

「……柱の人、怒らせないようにしなきゃ」
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