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涼風の残響【鬼滅の刃】

第26章 宵闇と朝焼け


「お父さんは……たくさんの命を奪った。鬼殺隊の隊士たちも……たくさん手に掛けて、喰らってしまった。だから許されないって分かってる……お母さんは、どうしても許されないことをしたお父さんであっても、ずっと一緒にいたいって言って……その願いを叶えたんだって分かってる……でも二人の行く先が……」

安らかに眠れる場所でないことが
どうしようもなく悲しくて辛い

そんな言葉、この場所では言えなかった。自分の父親は、勇の弟や牧野の大切な人たちを手に掛けてしまったのだ。
その娘である風音が言っていい言葉ではないと、必死に飲み込んだ。

父は罪を償わなくてはならない。
罪を償うための場所へ向かう父を、母は一人にしなかった。

全て分かっているからこそ、それ以上言葉を噤むのに、涙が止まらない。

(風音の性格じゃあ、それ以上ここで言えねェか……)

なぜ嗚咽を漏らし涙のみを流し続けるのか理解している実弥は、小さく息をついて、優しく涙を拭いながら問い掛ける。

「父ちゃんと母ちゃんは、どんな表情だったァ?どんな表情で、どんな言葉を風音に残したァ?」

実弥の言葉に、風音の脳裏に両親の最後の表情と言葉が、再び呼び起こされた。

「とても穏やかで……優しい笑顔。生まれ変わっても、お父さんとお母さんの子供に生まれて来てねって……私の幸せを願って……」

もう我慢出来なくなってしまった。様々な記憶が欠如した中で、新たに刻まれた記憶はあまりに悲しく、そして優しいもの。
しかし今の感情を口にすることで、この場にいるどれだけの人を不快な気持ちにさせるのか……と考えると、様々な感情が脳内でごちゃ混ぜになり、体の痛みを忘れて実弥にしがみつき泣きじゃくる。

「……じゃあ、幸せになんなきゃなァ。風音が落ち着いたら墓参りに行って、今幸せだって……伝えられそうかァ?」

泣きながらも小さく頷く風音に笑みを零しつつ、現状を把握しようと辺りを見回すと、柱たちのみならず剣士や隠たちまでもが二人の近くに集まり、肩で息をしながらも生暖かい視線を向けていた。

「はァ……しまりねェなァ。おい、風音。見てみろ、お前の記憶と引き換えみたいになっちまってるが、今の光景は風音が望んだ光景じゃねェのかァ?」
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